東京都内の病院で膵臓がんの手術を受ける直前の服部重次さん(2015年1月13日、家族提供)
中米ニカラグアの殺人事件で逮捕され、有罪判決を受けながらも、約20年にわたって無罪を訴え続けた服部重次さん=東京都江東区=について、ニカラグアの最高裁が再審請求を認め、無罪判決を出した。遺族らが2日、東京都内で記者会見して明らかにした。服部さんは判決直前の11月5日に68歳で亡くなった。
服部さんは1997年4月に同国を訪れたが、同行した従業員の日本人男性が遺体で発見され、直後に逮捕された。一貫して無罪を訴えたが、現地の裁判所は「男性に生命保険をかけて保険金目的で殺害した」と認め、有罪判決が確定。約11年にわたって身柄を拘束され、2008年に釈放されて帰国した。服部さんは09年に再審を請求し、「保険金の受取人は自分や会社ではなく、殺害の動機がない。通訳が不在のまま裁かれた」などと主張してきた。
支援してきた日本の弁護士によると、再審の判決は11月22日付。判決は「偽の証拠の存在や、通訳の不在などで判決に疑問が生じ、再検討が始まった」と再審開始の理由について言及。「古い司法システムのもとで様々な権利が守られていなかった」「証拠が誤って分析された」として、「すべての刑事責任について無罪とする」と結論づけた。
次女(37)によると、服部さんは再審無罪を心待ちにしていたが、10月中旬に体調が急変し、膵臓(すいぞう)がんで亡くなった。次女は「無罪の連絡を受けて遺影に『無罪だよ』と話しかけたが、父が聞いて喜ぶ顔が見たかった」と話した。(千葉雄高)