暴力団幹部に頼まれて土地を購入し、自分名義で登記した被告について、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪に問えるかが争点となった裁判の上告審判決で、最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)は5日、「罪に問えない」とする判断を示した。第一小法廷は、茨城県の建設会社役員の男(60)を有罪とした二審・東京高裁判決を破棄。土地の登記について無罪とした一審・水戸地裁土浦支部判決が確定する。
第一小法廷は一審と同様、売り主の認識と契約上の名義を重視し、「これを忠実に反映した登記は虚偽ではない」と判断した。この土地に建てられた建物の登記については一審で有罪とされ、この判決が確定する。
同県の暴力団排除条例は、暴力団関係者が事務所目的で土地や建物を購入することを禁止。被告は2012年に暴力団幹部に代わって土地を購入し、いったん自分の会社名義とした後、幹部名義に移した。建物は新築時に被告名義としたが、主に暴力団事務所として使用。費用はすべて暴力団幹部が負担していた。
13年の一審判決は、売り主の認識などから「登記は虚偽ではない」と認定。だが14年の二審判決は「単なる名義貸しと同じだ」として虚偽と判断した。