「この世界の片隅に」のワンシーン (C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
先月公開されたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が、異例のヒットを記録している。大手配給会社が関わっていない映画の制作を支えたのは、インターネット上で資金を集める「クラウドファンディング」だ。近年、市場規模が急拡大し、社会貢献から芸術、ビジネスまで、幅広い取り組みに使われている。
映画は、こうの史代さんの漫画が原作で、戦前から戦後にかけて、主人公すずたちの広島・呉での生活と、迫り来る戦争を描く。主人公の声は、俳優のんさんが演じた。
11月12日の公開当初に上映した映画館は計63館で、大ヒット中の「君の名は。」の6分の1。プロデューサーの真木太郎さんは「制作費は2億5千万円と低予算で、テレビ広告も出せない。自主制作映画みたいなもの」と言う。それでもツイッターなどで評判が広がって客足が伸び、4週目には公開中映画の動員数4位にまで上昇。興行収入も5億円を超えた。上映館数は年明けには累計で195館になる予定だ。
12月1日夜、満席になった東京都内の映画館で舞台あいさつに立った片渕監督は「(制作に)6年費やした。長く上映が続くように頑張ります」と話した。この日、映画を見た都内の大学2年木下奈旺(なお)さん(20)は「ツイッターで友達が薦めていたので来ました」。埼玉県の勝田まりさん(56)も、「ツイッターで評判が良かったから」という娘のゆり乃さん(21)と足を運んだ。「悲しみもあり日常の楽しさもあり、今までの戦争映画とは違う視点だった」と話した。
■目標額の2倍集まる
映画化の壁になったのが資金集めだ。真木さんは「監督や原作者のコアなファンはいるが、派手ではない作品。テレビ局や配給会社の腰が重かった。1年半くらい営業を続けてもいい返事が無かった」と話す。
そこでネットで小口出資者を募…
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