航空自衛隊小松基地(石川県小松市)で7日の訓練で使った小銃の部品が紛失した。地元紙が報じた後、基地側は情報を流した隊員がいるとして、所属する全約1800人に私用携帯電話の通話履歴を提出するよう求めた。業務外の様々な個人情報を含む通話記録の提出について内外から批判もある。基地側は事実関係を認め「犯罪や不正でもないことを外部に通報する行為は秘密保全の観点で組織上看過できない」としている。
小松基地によると、基地内の訓練で使用した64式小銃を点検した際、部品の円筒形ピン(直径約5ミリ、長さ約3センチ)1本がなくなっていることが判明し、その後も見つかっていない。北陸中日新聞が9日付朝刊で報じた。
小松基地は第6航空団司令が基地司令を兼ねている。基地関係者によると、9日、第6航空団の職場では、隊員に7日の分を含む数日間の私用携帯電話の通話履歴を提出するように上司らから口頭で指示があったという。
第6航空団司令部の安藤浩監理部長は取材に対して「犯人捜しのためではない。提出するかはあくまで任意だが、事の軽重を考えず、隊の行動が筒抜けになることは任務遂行に支障が出る」としている。
市民団体「公益通報支援センター」共同代表の森岡孝二・関西大名誉教授は「外部通報があったとされるなら、まず組織内で注意喚起すべきだ。隊員の携帯によるものかどうかも分からないのに通話記録の提出を全隊員に求めるのは、業務上必要な範囲を超えており、明らかに行き過ぎ。通報者をあぶりだす行為は公益通報を萎縮・抑制させるという点でも大きな問題だ」と話している。(福田純也)