二人の思惑
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は16日、北方四島での共同経済活動をめぐり協議入りで合意したことを公表した。ただ、ロシア側の強硬姿勢は緩まず、領土問題をめぐりはかばかしい進展は得られなかった。日本側は今回を「スタート地点」と位置づけて仕切り直しを狙うが、交渉の行方はなお見通せない。
特集:北方領土問題
日ロ首脳会談、領土成果なく肩すかし 「困難な道続く」
「これは平和条約の締結に向けた重要な一歩だ。この認識でウラジーミルと私は完全に一致した」。首相はプーチン氏とともに臨んだ16日の共同記者会見で、共同経済活動の協議入り合意を2日間にわたる首脳会談の成果として強調した。
両首脳による会談は今年4回目で、通算16回目。首相は会見で、プーチン氏に対して「君(きみ)」やファーストネームの「ウラジーミル」と何度も呼びかけ、親しい間柄をアピールした。
今年5月、ロシアの保養地ソチであった首脳会談で、首相は高揚した様子でこう語っていた。「この問題を2人で解決しよう。グローバルな視点も考慮に入れた上で、未来志向の考えに立って交渉していく、新しいアプローチが必要ではないか」。北方領土問題を含む平和条約締結交渉の前進を促した。
首相は9月、極東のウラジオストクを訪問し、ここでもプーチン氏と会談。終了後、首相は記者団に「新しいアプローチに基づく交渉を、具体的に進めていく道筋が見えてきた」と興奮気味に語った。
その後、側近の世耕弘成・経済産業相をロシア経済分野協力相に任命。首相が5月に提案した「8項目の経済協力プラン」の具体化を任せ、経済協力をテコに領土問題の進展を図るという姿勢を加速した。
首相の精力的な取り組みに、与党議員らの期待は高まった。領土問題の前進が内閣支持率の上昇につながり、その勢いを駆って首相が衆院解散に踏み切るのではないかとの観測がささやかれ始めた。
だが、11月になってロシア側…