建設中のロール加工工場=1941年(新日鉄住金八幡製鉄所所蔵)
現存するのか不明だった村野藤吾の「幻の工場」。八幡製鉄所OBの推理が発見の糸口になった。研究者は「戦時下の名建築」と評価する。
村野藤吾の「幻の工場」、八幡製鉄所で発見 今も稼働中
2014年11月。製鉄所OBの菅和彦さん(70)=北九州市=は「八幡製鉄所土木誌」のあるページで手をとめた。大正時代から終戦までの建物配置図。「ロール旋削工場」の脇に設計担当者らしい「村野・東郷」の名が記されていた。
「2人の連名のようだが、村野藤吾の誤記ではないか」。ピンときたのは、村野が製鉄所内の工場を設計したらしいと知人から聞き、十年来それらしき建物を探してきたからだ。その隣の「ロール鋳造工場」に「長谷部・竹腰」と、大手設計会社、日建設計(東京都)の母体となる建築事務所の名があったことも、著名建築家の名を連想させるのにつながった。
菅さんは製鉄所の記録を調べ、会社のOB会報で「自説」を発表。朝日新聞が京都工芸繊維大に確認するなどし、現在はロール加工工場と呼ばれる建物が村野の設計と判明した。
設計図を確認した同大の笠原一…