煙を上げる新日鉄住金名古屋製鉄所の施設=2014年9月3日、愛知県東海市、朝日新聞社ヘリから、山本正樹撮影
新日鉄住金の名古屋製鉄所(愛知県東海市)で2014年、コークス工場の火災で15人が負傷した事故で、愛知県警は6日、事故防止の注意義務を怠り火災を招いたとして、当時のコークス工場長(46)とコークス課長(44)を業務上過失致傷の疑いで書類送検し、発表した。2人は「発火の危険性は認識していた」と話しているという。
発表によると、火災は14年9月3日午後0時40分ごろ、コークスの元になる炭を一時的に貯蔵する、工場内の「石炭塔」で発生。周辺にいた社員11人と関連会社員4人の男性計15人が顔などにやけどを負った。うち7人が重傷だった。
石炭塔では13年7月にも9日間貯蔵した炭が自己発熱するトラブルがあったため、暫定的な処置として、貯蔵期間を「3日以下」としていたという。だが東海署によると、工場長ら2人が約4日間貯蔵するなど適切な安全対策を怠り、火災の発生で社員らにけがを負わせた疑いがある。
新日鉄住金が15年4月に公表した事故調査報告書は①石炭塔に約4日間貯蔵された炭が自己発熱したことで一酸化炭素などの可燃性ガスが発生②高温になった炭を塔底部から払い出そうとした際に空気が急激に塔内へ流入③一部の高温炭が吹き上げられて塔上層部のベルトコンベヤーに着火・延焼――などと、火災の「直接原因」を推定している。
新日鉄住金は6日、「事故発生後、再発防止対策をコークス事故対策委員会などの提言に基づき実施してきた。今後も、再発防止に向けて万全を期したい」とのコメントを出した。
また、半田労働基準監督署は同日、危険防止措置を怠ったため火災が起きたとして、コークス工場で現場指揮をした当時の係長(52)ら3人の社員のほか、法人としての新日鉄住金を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検し、発表した。