岸に引き揚げられた、転覆した川下り船=2011年8月20日午前10時51分、浜松市天竜区
川の「噴流」や「反流」に巻き込まれ、船は徐々に制御できなくなった――。2011年8月に浜松市の天竜川で起きた川下り船の転覆事故で、静岡地裁は16日、運航会社の当時の安全管理者ら3人に有罪判決を言い渡した。昨年9月に始まった公判では、これまで明らかになっていなかった事故の詳しい状況が判明した。
船頭ら3被告に有罪判決 5人死亡の天竜川転覆事故
検察側の冒頭陳述などによると、船が船頭2人と乗客21人を乗せて出発したのは8月17日午後2時ごろ。同2時18分ごろ、事故現場にさしかかった。
川幅約55メートルの急流。下流に向かって右にカーブし、左岸が岩場、右岸が河原になっていた。いったん底に沈んだ水が上昇して渦を巻く噴流がみられ、左岸付近では岩場に向かう強い流れが、右岸付近は上流にさかのぼる反流が生じていた。
船は渦の中心のやや右を通過しようとしたが、噴流などの影響で船首が右岸側に振られて180度回転。「上流に戻ってやり直そう」と船首側船頭だった大畑茂雄被告(67)が声をかけ、船尾の船頭=事故で死亡=が船外機のエンジンをかけた。
だが、すでに制御が難しい状態になっていた。「何やってんだ。そうじゃない!」「逆だ逆だ!」。公判で示された乗客の目撃証言からは船頭たちのそんなやり取りが明らかになった。叫び声のなか、船は船首を上流に向けたまま流されて岩場に衝突し、転覆した。
川でのカヌーを指導している日…