名古屋市のアパートで2014年に森外茂子(ともこ)さん(当時77)を殺害し、12年には同級生2人に硫酸タリウムを飲ませたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元少女(21)の裁判員裁判が15日、名古屋地裁であった。法廷では、昨年12月に録音・録画された元少女の妹(19)の証人尋問が再生され、妹は、森さん殺害当日に元少女から「今日、人を殺した」と聞かされていた、と証言した。
「タリウム事件の一部始終聞いた」 元少女の妹が証言
元少女は、名古屋大入学後の14年12月、自宅アパートで森さんを殺害したとされる。妹の証言によると、事件翌日に仙台に帰省した元少女は、妹に「服に血がついたので洗って欲しい」「(事件に関する)メールを消しといて」と依頼。さらに「お金を使って遊びたい。もう警察に捕まるから」と語ったという。
元少女は高校2年生だった12年5~7月、仙台市で中学の同級生女性(21)のほか、高校の同級生男性(20)に2回にわけてタリウムを飲ませて殺害しようとしたとして起訴され、殺意の有無が争点となっている。妹は、元少女が事件前に「(タリウム投与で)死ぬこともある」と話したほか、男性への2回目の投与後に「致死量より多く入れた」と話したことを証言した。
さらに妹は、事件後に元少女からタリウムをもらったといい、「私の同級生の男の子に『タリウムを入れてきて』と(元少女から)言われたことはある」と語った。
検察側から姉への思いを問われると、妹は「ちょっと難しい」。「姉は頭が良く要領が良くてうらやましい」と述べ、今も尊敬の念があると認めた。一方で、弁護側の問いにはナイフを突きつけられたり、顔をたたかれたりした過去も明らかにし、「怖かった」とふり返った。
元少女は、ほかの放火未遂事件などでも、犯行の意欲などを妹に直接語っていたという。弁護側は元少女に重い精神障害があったとして無罪を主張している。
検察側はこの日、妹が供述を変える恐れがあると判断し、尋問を昨年12月に仙台地裁で実施した、と説明した。刑事訴訟法は、捜査段階で重要な証言をした関係者が公判で供述を変える恐れがある場合、初公判前の証人尋問の請求を認めている。