告訴内容を説明する遺族の代理人弁護士=16日午後、神戸市中央区
西日本高速道路(NEXCO西日本)の男性社員(当時34)が2015年に自殺したのは長時間の過重労働が原因だとして、神戸西労働基準監督署が労災を認定したことが、遺族の代理人弁護士への取材でわかった。遺族は16日、社員への安全配慮を怠ったとして同社の役員ら8人に対する業務上過失致死容疑の告訴状を神戸地検に出した。
「夢を志した神戸でなぜ…」 自殺した社員の母が手記
発注にノーと言わぬ上司、長時間労働の要因 産業医指摘
代理人弁護士によると、男性は14年10月、宮崎県の高速道路事務所から第二神明道路事務所(神戸市垂水区)に異動し、経験のなかった道路補修工事の施工管理を担当。長時間労働を強いられ、うつ病を発症したという。15年2月、社宅で自殺した。
遺族側が勤務記録などを調べたところ、時間外労働は14年10~12月で毎月150時間以上に達していた。夜間工事の監督業務にも従事。午前4時59分の退勤から8分後に再び出勤し、事実上、約36時間の連続勤務をしていた記録もあったとしている。代理人によると労災認定は15年12月9日付。2カ月間にわたり、最大で月約140時間の時間外労働を認められたという。
男性の母親によると、神戸市出身の男性は阪神・淡路大震災で阪神高速道路が倒壊した様子を見て、安全で安心して暮らせる都市づくりに関わりたいと前身の日本道路公団に入社した。母親は16日に公表した手記で「働く者が仕事に誇りや喜びを持って人間らしく働ける社会であることを願ってやみません」と訴えた。
遺族が今回、告訴対象にした8人は、同社執行役員の人事部長や上司ら。長時間労働を把握し、自殺の危険性を予測できたのに必要な措置を怠った、と訴えている。遺族代理人の渡部吉泰弁護士は「長時間労働を社会からなくすには、労働時間に管理責任を負う人の刑事責任を問う必要があると考えた」と説明する。
西日本高速道路は16日、「このようなことが二度と起こらないよう労働時間の正確な把握の徹底を会社全体で進めているところです」とのコメントを出した。(川田惇史)