東京都小金井市で昨年5月、音楽活動をしていた冨田真由さん(21)がファンの男に刺され重傷を負った事件で、殺人未遂などの罪に問われた群馬県伊勢崎市の無職岩埼(いわざき)友宏被告(28)の裁判員裁判が21日、東京地裁立川支部であった。冨田さんの母親が出廷し、「娘は犯人の身勝手な行動で、心も体も傷だらけにされた」と語った。
事件後、冨田さんは手術を繰り返した。昨年12月の手術の後、「傷の痛みがひどくてずっと泣いていた」と証言。傷痕を目立たなくする手術を今後も予定しているが、「『こんな傷だらけになっちゃって』といつも言っている」と話した。
冨田さんは事件後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。家での様子について、「『助けて』と叫んだり泣いたりすることがある。前はそんなことしなかったのに物を投げ、『真由は頭おかしくなっちゃったね』と泣いている」と明かした。「外で体格のいい男性がいると、私の後ろに隠れたり、しがみついたりする」とも語った。マヒしている口のリハビリについて「治したいと一生懸命やっているが『全然治らないじゃん』と泣いたり、イライラしたりしている」と涙声で述べた。
冨田さんは審理の一部で出廷している。母親は「裁判前日も泣いて眠れず、私にしがみついていた。本当はつらく、姿も見せたくないけど、どうにか頑張ってここに来ています」と証言。「泣かない日はないけど、生きているからこそ苦しみもあるんだと言い聞かせている。娘にはどうにか立ち直ってほしい。犯人は許せない」と話した。
22日には、被告人質問や冨田さんの意見陳述などが予定されている。(根津弥)