第1回WBC準決勝の韓国戦で、7回を無失点に抑えた上原浩治さん=ロイター
■WBCを語ろう
野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。優勝した第1回大会の準決勝で先発し、7回無失点の好投を見せた上原浩治さん(41)=シカゴ・カブス=は「準決勝が一番大事」と話します。国際試合に強い上原さんが、WBCへの思いを語りました。
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WBCで一番印象に残っているのは06年大会の準決勝、韓国戦ですね。ほぼ完璧に近いピッチングでした。思っているところにボールをコントロールできたし、フォークの出来栄えもよかった。
元々メジャーに挑戦したいと思っていたので、WBCでメジャーのマウンドに立てたときは、喜びがありました。球場はサンディエゴのペトコパークでした。去年、レッドソックスの一員として10年ぶりにそのマウンドで投げ、けがからの復帰戦だったこともあり印象に残っています。韓国戦のことを思い出し、懐かしかったですね。
■ラッキーだった準決勝進出
06年大会では2次リーグで韓国に敗れ2敗目をした後、正直、もう敗退だと思って帰国する用意をしていました。それがメキシコがアメリカに勝って、棚からぼた餅のような形で準決勝に進出。緊張というより「もうけもん」という気持ちで試合に臨めました。韓国には1次リーグも含め大会で2敗していましたけど、僕自身は苦手意識はなかったです。アマチュア時代から韓国戦に投げて負けたイメージがなかったので。
WBCは準決勝から一発勝負のトーナメントです。決勝は勝っても負けても最後の試合。でも、準決勝は勝たないと決勝にいけない。だから、準決勝が一番大事な試合だと思います。
試合中はとにかくシンプルにしっかり抑えようという気持ちでした。6回まで両チーム無得点の投手戦でした。球数制限があったので、残りの投球数を逆算しながら投げていましたが、「早く点を取ってくれよ」とか、そういう気持ちは全くなかった。7回を投げ切って役割は果たせたし、気持ちよく投げられたという印象です。
■WBCの影響、シーズンには?
WBCでは好投できましたが05年、06年シーズンの成績は、キャリアの中ではよくなかったです。WBCの影響があったのかと聞かれても、わからないです。ゲームに臨む気持ちを継続させなきゃいけないのが、1カ月間増えただけだと思いますが。
それに、好投して帰国して気持ちは乗っているわけだから、体も乗っているはずなんです。WBCが体に影響したとは思わないです。
今回の大会、出場する気持ちで調整していました。ただ、やっぱり、僕らは球団から雇われている身なんで、どうしても球団の指示に従わなければならないんですね。
アメリカは日本以上に契約社会です。球団社長とか会長クラスの人から「出場を見合わせてもらえないか」と言われれば、それに従うのが僕ら。契約には含まれてはいないとしてもです。例えば、サラリーマンで言えば社長が「これはできればやってもらいたくない。見合わせてもらいたい」というものを社員は「嫌です」とは言えないでしょう。それと同じです。
■予選リーグすら簡単ではない
今大会は大リーガーの出場が各国で増え、侍Jといえども予選リーグ通過は簡単ではないでしょう。僕たちが優勝した06年大会とは比べものにならないくらい大会のレベルも注目度も上がっています。どこの国も油断はできません。
勝利のカギは一戦一戦を全力で臨むことです。そして、ゲーム終了まで決して気を抜かないことです。2点、3点勝っていたとしても、何が起こるかわからない。国際大会は特にそう思います。(聞き手・福角元伸)
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うえはら・こうじ 1975年生まれ、大阪府寝屋川市出身。小学校から野球を始め、東海大仰星高で3年夏に控え投手としてベンチ入り。1浪して大阪体育大に入学。99年巨人に入団し、1年目から最多勝や最優秀防御率を獲得。09年、大リーグボルティモア・オリオールズに移籍。13年に抑え投手としてボストン・レッドソックスの世界一に貢献。今季からはシカゴ・カブスに所属。右投げ右打ち。41歳。