ナンジャモンジャゴケ。餓鬼岳で見つけ、服部博士に届けた高木典雄・名古屋大教授(当時)にちなみ、学名は「タカキア」。後にボルネオ島やヒマラヤなどでも見つかった(服部植物研究所提供)
地面や岩にへばりつくように生えるコケ。地味な植物だが、世界に約2万種もある。このコケに特化した世界でも唯一という研究所が、宮崎県日南市にある。
「地元でもそれほど知られていないんです」と市の広報担当者。さっそく、研究所に向かった。武家屋敷が並ぶ県内有数の観光地・飫肥地区の目抜き通り。コケと同じ緑色の民家風の2階建て建物に「服部植物研究所」の小さな木の看板がかけられていた。
案内してくれた職員の南寿(なす)早苗さん(56)は「保管するコケの標本数ではおそらく世界一」。世界中の標本約48万点を保管し、世界で出版されたほぼすべてのコケ関係の書籍約2万4千点も収蔵。そばには標本庫や書庫もある。
世界有数の研究所が日南にあるのは、「コケ博士」こと服部新佐(しんすけ)博士(1915~92)の郷里だったからだ。博士は東京帝大理学部在学中にコケに魅せられた。研究するなかで「分類どころか名前すらついていないコケが多い」と実感。家業の林業を継ぐため地元に戻ったが、研究は続けた。
会社事務所の建物を改装し、1…