ロシアのプーチン大統領(中央右)と会談する安倍晋三首相(同左)=27日午後2時37分、モスクワのクレムリン、飯塚晋一撮影
安倍晋三首相は27日午後(日本時間同日夜)、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談した。両首脳は北方四島での「共同経済活動」をめぐり、5月中にも官民合同の調査団を日本から派遣することで合意した。また、元島民の墓参では航空機を利用することで一致。墓参に関しては、出入域手続きの拠点を歯舞群島の近くに新設する。
両首脳の会談は昨年12月、首相の地元山口と東京で行われて以来。第1次安倍政権時代も含めると、17回目となる。今回の会談時間は約3時間で、日本政府筋によると最初の約90分間の少人数会合で共同経済活動などを協議。その後、首相とプーチン氏が通訳を交えた2人だけの協議で約50分間、北朝鮮とシリア情勢について意見交換した。
首相は会談後の共同記者発表で、共同経済活動について「最初の一歩として、5月中にも官民による現地調査団を派遣することで合意した」と表明。「いよいよ日ロ双方の手によって、プロジェクトの具体化が始まる」と語った。漁業や観光、医療などの分野で両国がそれぞれ示した事業の絞り込みに向け、実務的な専門家を派遣して具体的な進め方を検討する。
また、現在は船で渡航している元島民の墓参について、航空機を用いて「6月に国後島と択捉島の先祖の墓にお参りしてもらいたい」と述べた。会談では国後島沖に限られている出入域手続きの場所を、8月にも歯舞群島の近くに新設することでも合意した。
両首脳は、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮をめぐる情勢についても意見を交わした。首相は記者発表で「日ロで緊密に協力し、北朝鮮に対し(国連)安保理決議を完全に順守し、さらなる挑発行為を自制するよう働きかけていくことで一致した」と語った。プーチン氏は「少しでも早く、(北朝鮮核問題をめぐる)6者協議を再開させることだ」との考えを示した。
両首脳は、7月にドイツで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議のほか、9月にウラジオストクで開催される東方経済フォーラムに合わせ、それぞれ日ロ首脳会談を行うことを確認した。(モスクワ=小室浩幸、駒木明義)
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〈共同経済活動〉 北方四島の領有権をめぐり対立する日本とロシアが、まず合弁事業などの協力を進めて信頼関係を深めようという考え。昨年12月の日ロ首脳会談で協議入りを合意した。過去にも、栽培漁業やインフラ整備などを想定し協議が行われたが、相手国の法律を自国の「領土」には適用できないという双方の立場が壁となり、実現には至っていない。