政権が利用拡大を目指すジビエ
シカやイノシシなど、農作物に深刻な被害を与える野生の鳥獣。安倍政権きっての実力者である菅義偉官房長官が旗振り役になり、政府が対策に乗り出すことになった。目指すは野生鳥獣肉(ジビエ)の利用拡大。官邸主導で盛り上げ、被害減少と農村の所得向上という「一石二鳥」を追おうとしている。
菅氏は28日の記者会見で「スピード感をもって政府をあげて対応策に取り組んでいきたい」と強調。27日に首相官邸であった関係省庁による会議では「全ての省庁一体となって取り組んでいく」と発破をかけた。ジビエの利用拡大には、安全性の確保や肉のカットの共通ルール化、安定的な供給などが課題とされ、課題解決への対応を速やかにまとめる方針だ。
霞が関ににらみを利かせる菅氏の肝いりだけに、会議に出席した山本有二農林水産相は早速、農林水産省の食堂でシカ肉を使ったメンチカツの定食を提供したことを報告。山本氏は「なかなか好評」と説明した。今後は、移動式解体車の普及などでジビエ拡大を後押ししていく考えも示した。
野生鳥獣による農作物の被害額は年間200億円近くにのぼる。政府はジビエの利用拡大が、政権が掲げる地方創生にもつながると算段。農林水産省に新たな組織を設け、外食や学校給食、ペットフードなどで、利用拡大を図る方針だ。(岩尾真宏)