照ノ富士を下した白鵬(右)=角野貴之撮影
(27日、大相撲夏場所14日目)
横綱になってから丸10年。白鵬がこれほど優勝に飢えた経験はなかったのだろう。「今日のはひと味違う感じだな」。支度部屋ではその重みをかみしめるように、静かな口調だった。
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照ノ富士とまわしを巡ってせめぎ合った。得意の右差し。腰を引いてまわしに触らせず、機をうかがう。照ノ富士の脇が空いた一瞬だった。左も差して一気に土俵外へ。主導権を握り続けた36秒間だった。勝負が決した後に不要な一押しはあったが、強さは際立っていた。
八角理事長(元横綱北勝海)は「芯がある。強い横綱がいると土俵が締まる」。第一人者が休場明けの土俵で力を改めて示した。
けがに苦しんだ1年だった。「きつかったのは、やっぱり手術をしたあと」。昨年名古屋場所で右足親指を痛め、遊離軟骨を取り除く手術をした。太ももなども痛め、2度休場。昨年夏場所までの9年間で10個しか与えなかった金星を、ここ1年で6個も配給した。
一方、「時間の問題だと思っていた」と今場所は復活への自信もあった。4月にモンゴルに帰国しリハビリを兼ねて下半身を強化。毎日、朝稽古後には体幹トレーニングに取り組んだという。師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は「下半身を鍛えてバランスが良くなった。この1年も良い勉強になったみたいだね」。
支度部屋でまげを整え直してホッと一息、苦節の1年を思い返して笑顔で言った。「とりあえず帰ったら、ゆっくり休みたいです」(菅沼遼)
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八角理事長(元横綱北勝海) 「白鵬は、ここというときは勝つ相撲を取っている。スキを見せない。1年ぶりの優勝は、復活したというほど状態が落ち込んでいたわけではないが、うれしいと思うよ」