米ニューヨークの国連本部で開かれている核兵器禁止条約の交渉会議にあわせて渡米している広島・長崎の被爆者らは18日、現地の若者らが開いた集会で被爆体験を語り、核なき世界の実現を訴えた。
核兵器禁止条約と国際署名
特集:核といのちを考える
核兵器の廃絶をめざして活動する若者グループがニューヨーク中心部で開いた会合では、被爆者の三瀬清一朗(みせせいいちろう)さん(82)=長崎市=が被爆体験を語った。
72年前、爆心地から3・6キロの自宅で被爆。窓ガラスの破片が飛び散り、柱やふすまに突き刺さったが、壁の陰にいて難を逃れた。
「まだ10歳だったが、国民学校で見たたくさんの負傷者の姿が今も忘れられない」。20人ほどの参加者は真剣な表情で耳を傾けた。
米国やオランダ、インドなど13カ国から集まった若者らは条約交渉の会期中に提言をまとめ、議長に提出する予定。英国人のヘイリー・ランセイジョーンズさん(36)は「核兵器は、子どもの心にも深い傷をつけるのだと知った。提言には被爆者の意見も盛り込めるよう話し合っていきたい」と語った。
ニューヨーク南部のブルックリン地区では核問題について考える集会があり、約150人が集まった。
3歳のときの被爆体験を語った箕牧智之(みまきとしゆき)さん(75)=広島県北広島町=の手には1枚の絵があった。血と土にまみれた女性や、身なりがボロボロになった人たち……。母親の背に隠れて不安そうな、当時の箕牧さんの姿もある。
日本大学芸術学部の富田真衣さん(19)=茨城県取手市=が、広島市内の高校に通っていたとき、箕牧さんの被爆体験を聞いて描いた絵だ。箕牧さんは絵や写真を示しながら、「核廃絶を先送りにしてはいけない」「立派な条約が誕生することを期待している」などと訴えた。
最前列で聴き入った米マサチューセッツ州の80代の女性は「何の罪もない子どもが巻き込まれたのだと想像させられた。絵には聞き手を引きつける、力強さがあった」と語った。(ニューヨーク=真野啓太)