英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉が19日、ブリュッセルで本格的に始まった。初回の交渉で、英国に住むEU加盟国からの移民の権利の保障継続、離脱前に英国が支払うEU予算などの分担金、英・北アイルランド地域の和平問題の三つを優先して議論することが決まった。
英国は、無関税で貿易ができるEUの単一市場からの離脱による英経済への影響を最小限にするため、将来のEUとの自由貿易協定を優先的に議論することを求めていた。だが、交渉を急ぐため、EU側に譲った格好だ。三つの分野で十分な進展があったとEU側が認めた後、貿易協定など離脱後の関係に関する交渉に移ることでも一致した。
交渉後の会見で姿勢の弱さを問われた、英国のデービスEU離脱担当相は「重要なのは(貿易協定の交渉が)いつ始まるかではなく、いつ終わるかだ」と反論。総選挙で与党が敗れ、英国内で単一市場への残留を主張する声も高まっているが、「姿勢は変わらない。国境管理を取り戻すため、単一市場を出る」とも述べ、交渉内容については「強硬離脱」を貫く考えを示した。
今後、この三つの分野でそれぞれ作業チームを作り、月に一度、1週間の交渉を重ねていく。EU側で交渉を担うバルニエ首席交渉官は「公平な合意は可能で、交渉が失敗に終わるよりずっといい」と話し、メイ英首相の「(条件が)悪い協定なら、ない方がましだ」という発言を牽制(けんせい)した。(ブリュッセル=津阪直樹)