国際サッカー連盟(FIFA)は27日、2018年、22年ワールドカップ(W杯)招致疑惑に関する調査報告書の全文を公式サイトで公開した。ドイツ大衆紙ビルトが入手し、22年大会招致に勝ったカタールに関する不明朗な金銭授受を報じた翌日の唐突な公開だった。22年大会に落選した日本の活動については、理事らに規定(上限100ドル)を上回る贈り物をしたことが明らかになった。
日本関連ではブラッターFIFA会長(当時)のほか、開催国決定の投票権を持つ理事12人に屋久杉で作った特製サッカーボールを贈呈したほか、伝統職人の手作りによる20万円近いハンドバッグや、10万円相当のペンダントやデジタルカメラなども理事や理事の妻に贈ったと記されている。
また、FIFA理事のいる国の代表チームの国際親善試合を仕切るエージェントの介在も浮き彫りになった。18年、22年大会の開催国を決める理事会の2カ月前だった10年10月に埼玉スタジアムで開かれた日本代表―アルゼンチン代表戦も指摘された。日本側はメッシの出場を条件に175万ドル(現在のレートで約2億円)の試合報酬を支払ったが、アルゼンチン・サッカー協会に入ったのは約7割で、高額な手数料がエージェントに渡ったとされる。
14年に作成された報告書はFIFA倫理委員会調査部門トップだったマイケル・ガルシア氏を中心にまとめた。FIFAは全文公開を拒み、要旨の公表だけで開催国の選定は妥当だったと結論づけていた。今回の全文公開で一部理事らへの常識を逸脱した便宜供与などが明らかになったが、ロシア(18年開催国)、カタールの不正を明確に示す証拠は出なかった。(ロンドン=稲垣康介)