無安打無得点試合を達成し、雄たけびをあげるふたば未来の草野投手=11日、いわきグリーンスタジアム、杉村和将撮影
(11日、高校野球福島大会 ふたば未来3―0福島北)
監督の言葉胸に… 三塁コーチャー「エースを助けたい」
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第99回全国高校野球選手権福島大会2回戦で、ふたば未来の草野陸世(りくと)投手(3年)が無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)を達成した。原発事故からの復興の象徴として2年前に開校した同校はこれが大会初勝利。草野投手は「野球ができるだけでも幸せ。ボールを寄付してくれたり、カツ丼をごちそうしてくれたり、いつも応援してくれる地域の皆さんに、これでいい報告ができる」と喜んだ。
草野投手は身長163センチと小柄な左横手投げの技巧派。いわきグリーンスタジアムであったこの日の福島北戦はカットボールがさえ、四死球を四つ与えただけで、88球で抑えた。六回に死球や失策などで1死満塁とされたが、内野ゴロと外野フライで切り抜けた。「みんなが守ってくれ、流れが変わった」。試合は3―0で逃げ切った。
ふたば未来は、原発事故で住民が一時全町避難した福島県広野町にある。原発事故後、休校する地域の高校に代わる存在として、復興を担う人材の育成が期待されている。
草野投手は東京電力福島第一原発から約15キロ南に離れた福島県楢葉町出身。原発事故後、さいたま市や同県いわき市で避難生活を送った。進学先には「ふるさとで野球をしたい」と迷わずふたば未来を選んだ。
1年生からエースナンバーを背負った草野投手。福島大会に初出場した一昨年は1―12でコールド負け。昨年も0―5で初戦敗退したが、シード校の学法石川を相手に善戦した。初めて3学年がそろった今年。「ふたば未来は弱いと思われたくない」と励まし合ってきた遠藤和明主将(3年)と「最後の夏に悔しい思いはしたくない」と話していた。
無安打無得点は、勝利の校歌を歌う前にベンチの仲間から言われて気付いたという。草野投手は「エースとしてこれまで貢献できなかったが、少しは成長した姿を見せることができた。甲子園出場を目標に、チームのみんなと一戦一戦を大事に戦いたい」と気持ちを切り替えていた。=いわきグリーン(床並浩一)