配送コストの上昇に苦しむ出版取り次ぎ大手4社が、出版社に追加負担を求め始めた。出版物の売り上げは一般に出版社(著者含む)70%、書店20%、取り次ぎ10%の割合で分配されてきた。だが最大手の日販は最大で4ポイント程度、増やすことを出版社に要求。全国津々浦々へ大量の本を一斉に届けてきた出版文化が岐路に立つ。
日販やトーハンなどは今春、出版社に文書を配布し、配送コストの追加負担を求めた。個々の交渉の詳細は明かしていないが、関係者によると、日販から書籍の取り分を4ポイント引き上げるよう求められた出版社もあるという。単純計算で出版社の取り分が66%に減り、取り次ぎ分が14%に上がる。トーハンも「手数料」として新たに支払いを求めている。
雑誌については、出版社は取引金額の0・55%を「運賃協力金」として負担してきたが、日販はこれも0・85%、トーハンは最大1%程度まで引き上げることを打診しているという。
配送コストの負担が重くなった背景には、物流の人手不足に加え雑誌不況の影響がある。雑誌が売れた時代には、連日の発売日に合わせて大量の雑誌を一斉に全国の書店に届ける際、「ついでに」送ることで書籍の配送コストを吸収してきた。だが2年前に書籍の売り上げが雑誌を逆転。出版流通の仕組みが機能しなくなり始めた。
配送コストの上昇は取り次ぎの経営を直撃。日販は今年3月期決算で、創業以来初めて取次業で5億6千万円の赤字を出した。トーハンも5年ぶりの赤字になった。取り次ぎの要求に応じれば、年間1億~2億円の追加負担が生じる大手出版社もあるという。
出版流通に詳しい清田義昭・出版ニュース社代表は「書籍を発売直後に店頭に並べることにこだわらなければ、コストを圧縮する余地はあるのではないか。アマゾンなどに対抗するためには前提を排した議論が必要だ」と指摘する。(岩田智博)