震災直後の自由の女神像=2011年4月5日、宮城県石巻市、竹花徹朗撮影
上半身だけの自由の女神像が東京都台東区の上野公園に設置されている。もともとは宮城県石巻市にあったが東日本大震災で被災し、傷ついた女神像を東京芸術大大学院生、村上愛佳(まなか)さん(24)が再生させた。
津波で片足失った自由の女神像 震災遺構の意味を問う旅
仙台市出身の村上さんは2015年に石巻市を訪れた際に、震災直後、津波に耐えたことで「復興のシンボル」などと話題になった自由の女神像が「いつのまにか」無くなっていることに気付いた。調べてみると、県内のパチンコ店から10年に石巻市内の公園に移設された像は、11年の震災で一部が破壊されたものの倒れず持ちこたえたが、劣化が進み14年に撤去されていた。その後は市内の倉庫に「忘れられたように」保管されていた。
村上さんは地域の住民などに女神像について聞いてまわった。「勇気をもらった」という人もいれば「石巻に震災の遺構として残っているのはおかしい」という人もいた。「どうでもいい」という意見もあった。
16年、市を介して所有者から譲り受け、どこにでも行くことの出来る「自由な女神」と名づけて大学の卒業作品展に出品、選考の結果、上野公園に展示される5作品のうちの1作品に選ばれ、来年3月までの展示が実現した。
「自由な女神」は次の移転先を募っている。「東京五輪が開催される新しい国立競技場の近く」や「石巻市の姉妹都市に」などのアイデアが寄せられている。村上さんは「なぜここにあり、これからどこへ行くのか、考えることで震災のことを思うきっかけになってほしい」と話している。アイデアは(nakazenomegami@gmail.com)まで。(葛谷晋吾)