稲わらの現状に危機感を募らせる高野正巳理事長=水戸市柳町1丁目
昨年の1世帯あたりの納豆購入額が、3年ぶりに全国一に返り咲いた水戸市。その一方で、わら納豆に使う稲わらの確保が農家の減少などで年々難しくなり、関係者は頭を悩ませる。伝統的な特産品を守るために、支援の輪が広がり始めた。
「今までつながりがなかった事業者と行政が連帯する。様々な課題があると思うが、力を合わせて乗り越えていきたい」
6月上旬、水戸市役所であった稲わらの確保をめざす協議会の設立総会。県納豆商工業協同組合に加わる納豆メーカーや市幹部らを前に、会長に就いた農事組合法人「島営農生産組合」(水戸市)の斎藤政雄・代表理事があいさつした。
市は今年度、稲わらの確保に向けた予算350万円を初めて計上した。協議会はこの予算を活用し、コンバインに取りつけて質の高い稲わらを確保する機器を農家に貸し出す。稲わらは障害者福祉施設で納豆を入れられる形に束ね、業者に買い取ってもらう計画となっている。
さらに市は、市の事業に寄付した企業の法人税などを軽くする「企業版ふるさと納税」の対象事業に、稲わら確保を指定した。6月末時点で8社から計約120万円の寄付を受けた。2019年度までには、約10万食分にあたる稲わら約12トンを確保したい考えだ。
わら納豆は、大豆を煮て納豆菌をつけ、わらに詰めて発酵させる。小型機か手作業で刈り取って天日干しにした、70~80センチほどの稲わらが適している。だが、わらが傷みやすいコンバインの導入や高齢化が進み、天日干しする農家は年々減っているという。
現状を受けて県内の納豆メーカー各社は昨春、稲わら1束の取引平均価格を約15円から20円ほどプラスし、製品も5割近く値上げした。販売量は減ったが、売上総額はあまり変わらず、稲わらの量を抑えることに成功した。
「わら納豆を巡る状況は年々大きく変わっている。現状に応じて対策を打たないと、わら納豆が消滅してしまう可能性もある」。県納豆商工業協同組合の高野正巳理事長は危機感をあらわにする。
■各地で支援の動きも