花咲徳栄―広陵 一回表花咲徳栄無死二、三塁、西川は先制の2点適時打を放つ。投手平元=林敏行撮影
(23日、高校野球 花咲徳栄14―4広陵)
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監督と主将の考えは一致していた。一回無死一塁。花咲徳栄(はなさきとくはる)の2番千丸に、バントのサインはない。「うれしかった。完璧に打てると思っていた」。4球目の直球をとらえた打球は、右翼手の頭上を越えた。
強攻策の二塁打で二、三塁と広げた好機。続く西川が二塁後方へ安打を放ち、2人を迎え入れた。「千丸を信じて、必ず攻めようと思っていた」と岩井監督が言えば、打った千丸も「ランナー一塁から2番の長打は最高の形」と自賛する先制劇だった。
ひたすらに打撃を磨いてきた。キーワードは「破壊力」。選手たちは昨冬、重さ10~15キロのハンマーを振り下ろすトレーニングに取り組んだ。2年前まで1キロだった練習用のバットも1・2キロに。体幹や手首の力を強くし、長打力をつけるのが目的だった。
背景には打ち負けてきた歴史がある。過去4度の出場は2001年が日大三(西東京)、11年は智弁和歌山と強打のチームに2桁失点で敗れた。一昨年は東海大相模(神奈川)、昨年は作新学院(栃木)とその年の優勝校に敗れ、「打たないと勝てない」が監督、選手の共通認識となった。
相手投手の攻め方に応じて、試合前日は「低めを打つ」「外角を打つ」など、練習も徹底した。この日は左打者が本塁ベース寄りに立ち、外角球を狙い打った。16安打で14点。2本の長打を放って4打点を挙げた西川は「トレーニングの成果が出ました」。大会新記録の6本塁打を放った広陵の捕手中村を「打ってくると思ったけど、上をいかれた」と嘆かせた。
埼玉の高校野球は伝統的に「守り重視」だった。
「ドラフト1位の投手は出るが、打者は数えるほどしかいない」とは県高野連関係者。13年に強打で選抜を制した浦和学院などとハイレベルな争いを続けて埼玉大会を3連覇した「トクハル」が、県勢の悲願を成し遂げた。(山口史朗)