マミートラックから森星さん担当へ 資生堂動かした一言——贯通日本资讯频道
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マミートラックから森星さん担当へ 資生堂動かした一言

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齋藤有希子さん=東京・汐留、戸田拓撮影


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9歳と4歳の2人の子どもを育てる私は、勤務時間に制限をかけて、いわゆる「9時5時」で働く。時間通りで帰れる代わりに、やれる仕事には限界がある。これってマミートラックかな……。同じように不安を抱え、もがいてきた女性に、新しい道を切り開くヒントをもらいました。


投稿募集:マミートラックに悩んだことは?


子育て世代のページ「エムスタ」


■NYコレクションに行くはずが


「これから花開く時だったのに、残念だったよね」。齋藤有希子さん(42)は育児休業からの復職直後、上司にこんな言葉を直接かけられた。


齋藤さんは資生堂のヘアメイクアップアーティスト。全社で40人あまりしかいない、ヘアメイクのスペシャリストだ。同社の数ある化粧品ブランドのメイクアップイメージをつくりあげていく部署に所属する。


コレクションシーズンには、NYやパリなど海外でモデルにヘアメイクを施すポジション。しかし、華やかな舞台にたどり着く前に、キャリアの階段を上れなくなってしまった。


■常に焦りがあった


大学卒業後、化粧品関連の会社に就職したが、ヘアメイクへのあこがれが募った。美容学校に入学したときはすでに26歳。


2年間みっちり勉強し、資生堂の美容院に契約アシスタントとして入った。


スタートが遅れた分、常に焦りがあった。


シャンプーや接客をこなしながら、連日深夜まで作品づくりに没頭し、毎月ヘアコンテストに応募。「見えない肩パットで武装する」ような気分でいた。


精鋭揃いのアシスタント6人のうち、1人しか受からないテストに合格した。それを機に、29歳で結婚。資生堂に正社員登用もされ本格的にキャリアをスタートさせた。


「美容師のアカデミー賞」とも言われる「ジャパン・ヘアドレッシング・アワーズ」で最優秀新人賞を受賞、作品は業界誌の表紙を飾った。


ヘアセミナーの講師に指名されたり、ブランドの広告撮影で海外に出張に行くことも決まりかけ、さあこれから!というときに、妊娠がわかった。


■考え変えた夫の一言


働き始めたころは、子どもを持つことはマイナスだと思っていた。まわりのアーティストの先輩はみんな仕事第一。そもそも結婚している人も少なかった。


遅咲きゆえにキャリアを優先させたい。夫婦の会話で子どもの話が出ても、もうちょっと待って…と先延ばし。でもあるとき、夫の一言で考えが変わった。


「キャリアが大事な気持ちもわかるけど、もし子どもを授かったら、すてきなことだよね」。


35歳で長女を授かった。1年半の育休後、「なんとも言えない虚無感」が待ち受けていた。


■長時間労働が不可能に


復帰してまずは、ヘアメイクの現場の仕事は少なく、トレンド分析の仕事を担当した。子どもはしょっちゅう熱を出す。あまりにも先が読めない毎日で、担当する量を減らしてもらった。先輩や同僚に助けてもらうばかりの日々。申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


ヘアメイクという仕事の特性上、長時間労働は不可欠だ。だがそれができなくなった。


例えば広告の撮影。出演タレントの予定に合わせる必要があるため、勤務時間が終わったからと帰るわけにはいかず、早朝から深夜まで拘束されるのが普通だ。海外コレクションへの出張なら、数週間も家を空けることになる。


周りのサポートが手薄なことも痛感した。ママ友たちと話していると「おばあちゃんが泊まってくれている」「実家暮らしはパラダイス」……。


■存在価値を感じられない


隣の芝生がまぶしい、うらやましい。自分の母は亡くなっており、夫の実家は遠い。夫は保育園の送り迎えなどするが、夫婦2人での切り盛りには限界がある。


現場仕事は減り、誰が手がけても変わらないような仕事の繰り返し。自分の存在価値が感じられない。「マミートラック」という言葉がちらついた。


そんな中、2人目となる長男を妊娠。自分が3人きょうだいで育ち、楽しかったことを考えると、産みたい気持ちが大きかった。


育休からの復帰後は、更に負荷の軽い仕事ばかり。悶々とする日々が続いた。


事務作業でも何でも、やれることはやった。その一方、自分はヘアメイクがやりたくてこの会社に来たはずだという思いも募った。


思い切って先輩に訴えた。


■声を上げ、同僚に推されて


「私、全然ヘアメイクの仕事がないんです。どんなに小さくても、自分に任せてもらえる仕事がしたいんです」


時間に制約がある自分がこんなことをいうのは、おこがましいかもしれない。迷いはあったけど、声を上げずにはいられなかった。


訴えは実り、一つの化粧品ブランドの担当になり、ウェブで美容情報を発信する仕事を任された。続けて、仕事ぶりを見ていてくれた同僚の推薦もあり、「インテグレート」の撮影担当になった。モデルの森星さんを起用したブランドだ。


声を上げたことで、自分の中で何かが変わった。海外のコレクションを飛び回るようなキャリアの階段はあきらめよう。そのかわり、自分だからこそできる仕事って、あるんじゃないか。そう思ったとき、マミートラックから抜け出せるような気がした。


以前、福島県であった復興支援イベントのことも思い出した。


■思いがスッとつながった


地元の子どもたちにヘアメイクを施し、元気を出してもらう企画だった。夫や長女も連れて家族で参加した。


ぐずった長女をおぶりながら、イベントに参加した女の子の髪を巻いたり、マニキュアを塗ったり――。私にもできることがある。たとえ海外のコレクションに行かなくても。子どもたちの笑顔がよみがえり、思いがスッとつながった。


社内では「ママプロジェクト」が立ち上がった。ヘアメイクの力で、日々大変な思いをしているママを元気づけようという企画だ。迷わず入れてもらい、今ではリーダーとして、これからを模索する。


長女は7歳になった。メイクに興味津々で、森星さんが出ているテレビ番組を見ると、「おかあさん、メイクやったんだよね」と嬉しそうに話す。


子どもたちの世代には、いろいろな働き方ができる環境になってほしい。


大切なのは、従来のキャリアアップにとらわれないこと。まずは目の前の仕事をこつこつ積み上げること。そして、制限があっても、勇気を出して「やりたいこと」を言ってみることなんだ。すぐには花開かなくても、だんだん周りの景色が変わっていくはず。そんな思いで、自分のできることを進めていこう。(小田切陽子)



〈マミートラック〉 出産した女性が、負荷の高い仕事を任されず、キャリアアップが望めない状態になること。



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