ホテル上層階のベランダに産んだ卵と親のハヤブサ。砂利はホテル側が用意した(2011年3月26日、大阪府泉大津市、泉大津ハヤブサ・サポート倶楽部提供)
海岸のがけに生息し、猛スピードで獲物を捕らえるハヤブサ。絶滅危惧種の猛禽(もうきん)類が、高層ホテルや団地、オフィス街を新たなすみかにしている。関西や北陸ではこの10年で少なくとも、100羽以上がビルで孵化(ふか)した。街育ちは絶滅の危機を救えるのか?
特集:どうぶつ新聞
大阪湾に近い大阪府泉大津市の20階建てホテル。高層階で4月に生まれたハヤブサの幼鳥がその翌月、ベランダからうまく飛び立てず、駐車場に落ちた。
保護のための観察を続ける市民グループ「泉大津ハヤブサ・サポート倶楽部(クラブ)」のメンバーが毛布で抱え、ベランダへ。メンバーの阪上幸男さん(69)は「近くに高速道路があり、車の往来も激しい。巣立つまで見守ります」。ホテルでは2004年からこれまで、計37羽が孵化している。
和歌山市の和歌山城前にあるオフィス街では、14階建てビルの屋上にある植栽用プランターから、9年間で26羽がかえった。日本野鳥の会和歌山県支部幹事の上野憲三さん(68)は「ひなの顔を見るのが楽しみ」。京都市伏見区のUR都市機構の団地でも10年以上前から姿を見せ、住民男性(75)は「団地の屋上で幼鳥がバタバタしていた」と驚きを隠せない。大阪府八尾市ではごみ焼却工場の煙突で09年から孵化を始め、今年は4羽が巣立った。
北陸も多い。石川県庁の庁舎で17羽、新潟県庁舎で6羽が孵化。福井県自然保護センターの松村俊幸所長によると、金沢駅周辺の高層ビルでも02年から30羽以上が巣立った。金沢生まれのハヤブサが直線で約250キロ離れた新潟県庁で巣を作ったことが、脚につけたリングで確認された。
主に海岸のがけ地で繁殖してい…