提言をする名古屋大の学生たち=10月14日、東京都渋谷区の国連大学、嶋田達也撮影
世界経済フォーラムが今月公表した男女格差(ジェンダーギャップ)の国別ランキングで、過去最低を更新して114位だった日本。ジェンダー平等の社会をつくるために、自分たちに何ができるか。若い世代が考え始めている。
特集「Dear Girls」
「日常会話にあふれる男らしさや女らしさを決めつけた表現を、『ステキワード』に変えよう」
10月半ば、都内で開かれたイベントで、名古屋大学(愛知)の学生4人がこんな提案を発表した。イベントは国連女性機関のUN Womenと資生堂が主催。中学や高校、大学計8校の代表グループが、ジェンダー課題解決に向けた様々な提言を発信した。
名大のグループは、「ステレオタイプな男女観は個人の能力を制限する」という考えから、「女子力高いね」は「器用だね」に、「女々しいな」は「繊細だね」に言い換えることを、寸劇を交えて示した。
4年の福井ゆたかさん(24)は、「『女子力』って便利な言葉だけど、しっくりきていなかった。制度や仕組みをつくるだけでなく、身近なところからできることを考えていきたい」と話す。
メディアの影響力に着目した提言もあった。中央大学(東京)のグループは、昨年ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にならい、「50歳の管理職男性が主人公のドラマを制作し、ネットで配信する」というアイデアを披露した。部下の女性社員が次々と退社したり、娘の進路の悩みを聞いたりするなかで、自分が固定的なジェンダー観を持っていたことに気づき、態度を変えていく姿を描くという。
郁文館グローバル高校(東京)の生徒4人は、ヒーローアニメに性的少数者のキャラクターを登場させたい、と語った。海外では、同性愛者であることを公表しているアップルCEOのティム・クック氏や女優のジョディ・フォスター氏らが自然体で活躍しているが、日本ではロールモデルがまだ少ない、と指摘。「子どもの頃からアニメを通じて(多様な性を)身近に感じてもらうことが狙い」と説明した。3年の松本凜(りん)さん(17)は男女格差の今年の日本の順位を知り、「さらに下がってショック。自分たちが社会を変える原動力になりたい」と話した。
女性の正規雇用率を上げるために、同世代の男子生徒の意識改革を促す、という提言もあった。
愛知県立旭丘高校の女子生徒5人は、校内アンケートで「将来妻に定年まで正規雇用で働いてほしい」と回答した男子生徒が2割未満だったという結果を示し、「女性が働くことに消極的な男子の意識を変えたい」と、ワークショップの開催を提案した。平塚らいてうの「元始、女性は太陽であった」という言葉を引き、「女性は今は月のようだが、太陽になろう」と呼びかけた。
会場で提言を聞いたUN Womenのラクシュミ・プリ事務局次長は「日本では、就労率や収入、国会議員の数などで男女格差が大きい。若い世代はジェンダー平等の課題を体で感じ、変化への準備ができており、彼らの力が鍵になる」と話した。(村井七緒子)