左から清水さん、福村さん、上村館長、小林さん、長谷川さん
講道館の上村春樹館長がこのほど、知的障害がある神奈川県の柔道選手4人の初段への昇段を認め、免状を授与した。大会出場機会に乏しい障害者にも昇段のチャンスを広げようと、講道館が内規を変更。4人がこの変更を利用して昇段した最初のケースとなった。
今回初段に昇段したのは、神奈川県大磯町の浜名道場に通う福村翼さん(26)、小林陸さん(19)、清水瑚都(こと)さん(18)、長谷川大智さん(16)の4人。それぞれ幼い頃から10年前後、健常者に交じって柔道に励んできた。
大会出場実績なくても可能に
初段には満14歳から挑戦できるが、これまでは昇段には原則として大会への出場実績が必要だったため、出場機会のない4人には資格がなかった。指導する浜名智男さんは「同じ道場で一緒にがんばってきた健常の仲間がだんだんと黒帯を取っていく中で、4人の努力も認めてあげたいとずっと考えていた」。
そんななか、講道館が「障害のある人も含め、様々な柔道家に昇段の門戸を広げたい」と昨年、昇段資格に関する内規を変更。大会への出場実績がなくても一定の技能を身につけていれば昇段を認めることになったことから、4人が今回、昇段試験に挑んだ。
柔道は視覚障害だけがパラリンピックの種目になっているが、知的障害者の柔道は国内でも普及が進んでおらず、大会もほとんどない。浜名さんは、4年に1度行われる知的障害者の世界大会「スペシャルオリンピックス(SO)」への出場を目指し、今年から「SO日本」の柔道部会を設けたばかりだ。「世界大会につながれば選手の励みになる。全国大会が開けるよう普及に努めていきたい」と話す。
免状を受け取った後、初めて黒帯を締めて講道館内の道場で技を試した福村さんは「これからは連続技をがんばりたい」と意気込んでいる。(伊木緑)