朝日新聞デジタルのアンケート
子どもを取り巻く環境の変化を紹介した11月6日付フォーラム面に、多くの声が届きました。今回は、その中でも多かった「子ども、子連れがOKの場所と、拒否する場所に分けてしまえばいいのでは」という意見について考えます。「子連れ専用」や「子ども歓迎」をうたう取り組みも取材しました。
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「泣いていい」マークや公園規制を紹介 前回11月6日の記事
交通機関や公園などで、子どもや親に向けられるまなざしは必ずしも優しいものばかりではありません。11月6日の前回記事では、公共の場で赤ちゃんが泣いても、周囲が「気にしなくていいよ」と伝えるマークが各地に誕生している話題や公園での遊び方を規制する動き、保育園の建設反対に関するデータなどを紹介しました。フォーラム「子どもお断り?社会」では、多様な人が公共空間で共存するためにはどうしたらいいか、みなさんから届いた声や取材を通じて考えていきます。
周りに配慮欠く人も
届いた声の一部を紹介します。
●子どもたちが小さかったころ、電車ではいつもおんぶひもを使い、絵本を持っていました。ベビーカーにスマホというスタイルより近寄りやすかったのか、よく親切にしてもらえました。とくに年配の女性たちが子どもをあやしてくれたり、若い方が優先席を譲ってくれたり。私は助けられた思い出の方が多いです。(栃木県 30代女性)
●基本的にはどんな人もお断りされてはおかしいと思う。ただTPOに応じたマナーは必要だし、お店などの経営方針としてお断り条件を提示するのは構わないと思う。美術館やクラシックコンサート、観劇など、子どもの状態によっては途中退館することも念頭に置いて来てほしい。「親も楽しむ権利がある」という声もあるが、それは周りに配慮したうえで言えること。子連れに限ったことではないが、最近、余裕がないのか間違った多様化の意識からか周りへの配慮に欠ける人をしばしば見かける。(千葉県 50代女性)
●子どもの声が聞こえなくなると、町が死んだように感じます。毎朝通学風景を見ていると良いですよ~。もっともっと走り回れ~、いっぱい走り回れ~!(山形県 60代男性)
●大人の隠れ家的な鉄板焼きの店。子ども、母親、祖母の3人連れが隣に座って、大騒ぎ。時々ジッと見つめたが、こちらの迷惑に気づかない。静かにできない方は、ご遠慮願いたい。こちらは静かさにお金を払っている。ファミレスに行けば良いのでは?(ツイッターから)
●娘が1歳のころ、東京都内の病院に健康診断に連れて行った帰りのことです。暑い日差しの中で長い間バスを待ち、ようやく乗ったのに娘が泣き出しました。なだめても泣きやまず、「お客さん、他の人の迷惑になりますから降りてください」という運転手の言葉で降ろされました。タクシーを拾って帰宅しました。会社に苦情の手紙を書き、係の人が謝りに来てくれましたが、その時の傷ついた気持ちは今でも思い出します。(英国在住 70代女性)
●公共の場にふさわしい子どもってなんだろう。大人の社会からどんどん子どもが締め出されていく。子どもは何をモデルにして大人になったらいいんだろう。(ツイッターから)
公園の声や球音 私の経験は… 落ち着かない/お年寄りは許される?
球技禁止など、公園での遊び方を規制する動きについて紹介した記事に、それぞれの視点から経験談が寄せられました。
●苦情を言う人に対しては、「公園のそばに引っ越す前に、わからなかったのかな」と思っていました。
でも、昨年、家の改築のため10カ月間、公園近くに仮住まいをした時のこと。毎日、朝6時から始まるサッカーのボールを蹴る音、夕方からは、「キー」という奇声を発する子の声。日曜日は、朝から夕方まで、ずーっと大人と子どもの声。いつも落ち着かなく、家の普請が終わって、やっと静かになりホッとしました。(神奈川県、50代女性)
●子どもから「先生に『公園でサッカーをして騒いでいる声がうるさいと学校に通報があったから、やめておいて』と言われた」と聞き、驚きました。
確かに、子どもたちがボール遊びをはじめると騒がしくはありました。けれど、午前中はご年配の方たちがこの広場を使いゲートボールをしていて、カコーンという音が通りがかりに聞こえますが、それは許されるのかともやもやとしました。
行政も苦情があったら、禁止事項を考えて立て看板をたてるだけでなく、住居地域にある公園という場がいろいろな年齢層のニーズに応えられるよう、どんな改善や工夫ができるかを住人を交えて真剣に考えたらどうでしょうか。
学校も苦情を子どもに伝えるだけでなく、お年寄りや小さな子どものいる親にとって、あなたたちの声や行動が時として迷惑に感じることもあるんだよと丁寧に教えてほしい。
(千葉県、40代女性)
子連れ専用車両 好評
JR東海では、夏休みや年末年始といった行楽や帰省のシーズン中、東海道新幹線「のぞみ」に、子連れ専用車両の「ファミリー車両」を設けています。
申し込みができるのは、大人と小学生以下の子どもによるグループ。1歳以上は子ども料金がかかりますが、席の数は料金を払った人数に一つ追加されます。大きな荷物があっても、ゆったり過ごせます。
JR東海によると、きっかけは、車内の混雑時に子連れの家族が周囲に気を使う様子が見られたこと。すべての利用客が気兼ねなく旅行できるようにと誕生しました。
2010年の夏に2日間の4本からスタートし、今夏は51日間169本まで増加。約8400人が利用しました。リピーターも多く、「もっと拡充して」という声も届くそうです。この冬も予定されています。
一方、普段はファミリー車両はありません。限られた席以外は乗りにくい……といった悩みもありそうです。
東海道新幹線で、授乳や体調不良の際に利用できる多目的室のある11号車や隣の12号車には、親子連れの姿が目立ちます。
11月中旬、新大阪駅から品川駅まで長男(2)と乗車した主婦(32)は、「いつも12号車の最後列、通路側を狙う」と話します。多目的室が近く、席の後ろにベビーカーを置けるため。「子連れが多いので気が楽」という理由も大きいといいます。
新幹線に乗る際は、必ず長男が初めて見るシール、おもちゃ、塗り絵を準備します。それでも泣いてしまい、2時間半ずっとデッキに立ってあやし続けたこともありました。「大丈夫」と声をかけてくれる人もいてありがたかったものの、「やっぱり気にしちゃいます」。その席が空いていないときは、新幹線や日程自体を変えるそうです。
美術館 気兼ねなく楽しんで
年齢制限はないのに子連れでは行きづらい。その一つが美術館です。
公益財団法人「1more Baby応援団」は2014年、「子連れで美術館に行くのは何歳から?」とインターネットで聞きました。その結果、20~30代の子育て中の既婚男女が答えた平均は6.2歳、それ以外の人では7.5歳でした(7335人回答)。
そんな中、東京・丸の内の三菱一号館美術館では今年10月から月1回、会話しながら鑑賞ができる「トークフリーデー」を始めました。
声の大きさを気にしなくていいとあって、11月末の開催日は、赤ちゃんを抱っこしたり、ベビーカーに乗せたりしている人の姿が見られました。横浜市の会社員森芙紀(ふき)さん(36)は、長男英介くん(5カ月)を連れ、友人親子と来館。「美術館は好きでしたが、子どもが小さいうちは無理だと思っていました。リフレッシュできました」と話しました。
この取り組みは、「子連れでも気兼ねなく鑑賞したい」「感想を言い合いながら鑑賞したい」という来館者の要望を受けたものです。一方で、静かに鑑賞したい人たちにも配慮し、原則毎月の最終月曜の休館日を開館に切り替える形で、当面1年間、試験的に続けるそうです。
ただし、この美術館は通常の開館日の会話を制限しているわけではありません。広報の後藤夕紀子(ゆきこ)さん(36)は「トークフリーデーが浸透することで、『しゃべりたい人や子ども連れはこの日だけ』とならないよう、通常日も会話ができることをセットで広報していきたいです」と話します。
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7歳と5歳の子どもがいますが、今も出かける際は場違いな場所かどうかが気になります。「子どもOK」と言われると安心感が違い、そんな場所が増えると助かると思う一方で、それ以外の場所では今以上に遠慮しなければならないのかなと、複雑な気持ちになりました。(十河朋子)
◆ほかに浜田知宏、田中陽子が担当しました。
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