国連安全保障理事会(15カ国)は11日、北朝鮮の人権問題を議題として採用し公開会合を開いた。限られた資源を核・ミサイル開発に費やし、人権を軽視する体制への批判が相次いだほか、北朝鮮による拉致問題に触れる理事国が過半数に及び、国内外での人権侵害を非難する場となった。
北朝鮮の人権をめぐる安保理会合は2014年以来4年連続。中国は「安保理は人権を協議する場ではない」と反対したが、投票になり、日米など10カ国の賛成で議題化が決定。反対は、中国のほかロシアとボリビアの計3カ国。エジプトなど2カ国が棄権した。議題化の投票に拒否権はない。
投票前の演説も含めると9カ国が拉致に触れた。米国のヘイリー国連大使は「歴史を振り返れば、自国民の面倒を見ない国は紛争を起こしてきた」と人権と安全保障の関連を指摘して議題化に賛成。北朝鮮の人権問題を列挙した上で「この体制下で苦しんでいるのは北朝鮮人だけではない。大勢の日本人とその他の国々の人々が拉致されてきた」と非難した。
スウェーデンは「日本人ら拉致被害者の帰国について行動が欠如している」と指摘した。日本の国連代表部によると、英仏伊やカザフスタン、ウクライナ、エチオピアも拉致に触れた。
日本の別所浩郎・国連大使は「被害者には13歳の少女も含まれ、将来が奪われて家族が分断された」と訴えた上で、「被害者の家族の中には亡くなり、最愛の家族に再会できなかった人もいる」と述べ、即時帰国の実現に向けて国際社会に協力を強く求めた。(ニューヨーク=金成隆一)