認可保育園に希望しても入れない待機児童を抱える自治体に対し、厚生労働省は潜在的な需要を把握した上で保育施設の整備計画を作るよう要請した。申し込む前に入園を断念する親もいて、政府の整備目標が甘いと指摘されているためだ。ただ、潜在的な需要を見極めるのは難しそうだ。
政府は6月、待機児童解消の目標時期を2017年度末から20年度末まで3年間先送りし、それまでに保育施設を32万人分整備する新計画を打ち出した。厚労省はこの計画の具体的な実施方針を決め、21日付で各都道府県に通知した。
計画の対象は、18年4月時点で待機児童がいるか、いなくても保育需要が増えると見込まれる市区町村とし、国の施設整備費の補助割合を通常の2分の1から3分の2に引き上げる。
市区町村には、保育サービスを適切に提供できる範囲として設定された区域ごとに、①21年度まで各年度4月1日時点の申込数②必要な整備数③待機児童数――について0歳児、1~2歳児、3歳児以上の年齢別に推計するよう求めた。
この際、潜在需要を盛り込むことも要求。保育園に入れにくいとされるフリーランスなど、自宅で仕事をする人が窓口を訪れた際に就業状況を聞き取り、保育の必要性を見極めることなども求めている。
市区町村はこうしたデータに基づき認可園をいくつつくるかといった整備計画を来春までに作成。計画は厚労省がまとめ、公表する予定だ。ただ、潜在需要は自治体が接触した人でないと把握は難しいのが実情だ。政府が20年度から本格実施する保育の無償化の影響も「状況の変化が見込めていない」(東京都目黒区の担当者)との声がある。
自治体が潜在的な需要を掘り起こした結果、必要な整備数が政府目標を上回る可能性もある。安倍晋三首相は11月の衆院予算委員会で、「断定的に(待機児童が)ゼロになるとは言えない」と答弁し、計画通りに進んでも待機児童問題が解消しない可能性を示唆している。(西村圭史)