キリンビバレッジのバリューベンダー、中辻和樹さん=東京・霞が関、横関一浩撮影
キリンビバレッジバリューベンダー 法人営業部担当部長 中辻和樹さん(47)
官庁街を見下ろす東京・霞が関の高層ビルの10階。200人ほどが黙々とパソコンに向かう人材派遣業のオフィスの一角で、飲料の自動販売機の取り出し口に缶やペットボトルが落ちる音が響く。社員が席を立っては小銭を入れ、缶コーヒーやお茶を買っていく。男性社員は「会議の始まる前や、途中にもよく使います」。
オフィスの自販機は食堂や休憩室、廊下などの共用部に置くことが多い。この人材派遣会社も休憩室だけに置く予定だったが、頼み込んでオフィス内を隅々まで見せてもらい、社員の数や動線を確認。大きく二手に分かれるオフィスの中間点にあたり、事務用品置き場もあるスペースへの設置を認めてもらった。売り上げは好調という。
キリンのグループ会社で、2004年に飲料自販機の設置担当になった。人口減に加え、コンビニのいれたてコーヒーなどライバルも増え、飲料自販機をめぐる競争は激しさを増している。業界団体によると、昨年末の飲料自販機は全国で247万台。採算割れで撤去される自販機が増え、ピークの05年から20万台減った。厳しい環境が続くなか、1千台を超す飲料自販機の設置を手がけてきた。
自販機設置の主戦場は、比較的安定した売り上げが見込めるオフィスなどの屋内に移っている。空き地の一角やビルの横などを提示され、「ここに置かないか」という話が舞い込んでも、都心の一等地をのぞき、採算を考えて断るケースが少なくない。屋内に照準を合わせているのは、同業他社も同じ。いかにお客さんに近いところに置くかが腕の見せどころだ。「振り返ると、自販機がある。それが一番」。稼げる「穴場」探しに余念がない。
営業で都内の商業施設を訪ねた…