斎藤慧のドーピング問題で、会見する斎藤泰雄・日本代表選手団団長(中央)、伊東秀仁・総監督(左)と川崎努・ショートトラック監督=13日午前11時2分、平昌メインプレスセンター、樫山晃生撮影
平昌(ピョンチャン)冬季五輪代表のスピードスケート・ショートトラック男子の斎藤慧(けい)(神奈川大)がドーピング検査で陽性反応を示した一件は、本人を含め日本関係者の説明を聞く限り、謎が多い。
もっと発覚まで「空白の6日間」一体何が? ドーピング陽性
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斎藤は声明で、こう主張した。「身に覚えのないことで不可解。潔白を証明するために戦っていきたい」
反ドーピングの講習会などを受け、体調を崩したときに処方される薬については専門家に相談してきた。日常の食事や飲み物にも気をつけていたという。ショートトラックの川崎努監督は「若くして頭角を現したので、ドーピングの講習を受け、意識の高い選手」とかばった。
1月29日の国内合宿中に受けた検査では陰性だったわけで、その後の6日間で「偶発的に起きた出来事により、禁止薬物が無自覚のまま口に入ってしまった」(斎藤)ことになる。この禁止物質は処方箋(せん)が必要で、一般の薬局では購入できない。「うっかり」で摂取する可能性は低い。
となると、誰かが飲食物に混入した可能性が浮上する。今年1月、カヌーの国内トップ選手がライバルの同僚を陥れるために禁止薬物を飲料水用ボトルに混入する悪質行為が発覚したのは、記憶に新しい。
しかし、栄えある五輪代表に選ばれ、一丸となって平昌に乗り込むリレーメンバーの仲間が薬物を混入するとは考えづらい。斎藤は今回が五輪初出場。リレーの補欠の立場で、ここまで出場機会はなかった。
CASの最終的な裁定は大会後に行われる。日本選手団の斎藤泰雄団長は「今の段階では、陽性に反証するデータを提示できない」と語った。その状況は、時間が経過することで好転する可能性は低い。クリーンさが売り物だった日本スポーツ界が、ドーピング渦にのみこまれている。(編集委員・稲垣康介)