北海道旭川市で車の衝突に巻き込まれて高校生が亡くなった事故を巡り、遺族が運転手らに損害賠償を求めた訴訟で、被告の女性が具体的な証言を拒む方針であることがわかった。被告の女性は事故の当事者で唯一の生存者で、遺族は「事故の真相を知りたい」と証言を願っていた。
事故は2014年6月、旭川市の国道12号交差点で直進車と右折車が衝突し、直進車に乗っていた2人と信号待ちをしていた旭川実業高校2年加藤健太郎さん(当時17)が死亡した。右折車を運転していた70代の女性は自動車運転死傷処罰法違反で旭川地検に送検されたが、嫌疑不十分で不起訴となった。
原告側によると、女性は警察や検察の捜査にほぼ黙秘し、事故後も遺族に直接の接触はないという。加藤さんの遺族は民事訴訟で女性から事故の状況を聞けると期待しており、旭川地裁も女性の尋問を採用した。しかし女性側は、黙秘権を保障した憲法の規定を根拠に最高裁に特別抗告。抗告は退けられたが、女性側は地裁に上申書を提出し、出廷しても黙秘する方針を示したほか、女性を尋問せずに黙秘を前提に審理を進めるよう求めたという。
民事訴訟法では、正当な理由なく訴訟の当事者が陳述を拒んだ場合、相手側の主張を真実とみなすことができる規定があるが、女性側は正当な理由があると主張するとみられる。加藤さんの両親は「親として唯一してやれるのが、真相を明らかにすること。息子は無念だろう」と話した。
これまでの裁判では、事故の目撃者らが証言。女性が事故を回避できる可能性があったかなどが争点となっている。(渕沢貴子)