食事や体調管理について話す木村雅浩さん=長岡京市の乙訓高校
第90回記念選抜高校野球大会で第6日(28日)、乙訓(京都府長岡京市)は甲子園での初試合に挑む。2年前から体調管理を支えてきたのは、スポーツトレーナーの木村雅浩さん(51)=京都市=だ。元五輪フィギュアスケート選手の町田樹(たつき)さん(28)を指導した経験もある。専門知識にもとづき月3回、トレーニングの指導や治療にあたっている。
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2月下旬、グラウンドで1時間の打撃練習を終えた乙訓の選手は、かばんからおにぎりやバナナを取り出し、ほおばった。15分間の「補食」で、練習の合間や試合の五回終了時に糖分を取る。木村さんは「脳が疲れる90分ごとに糖分を補給し、プレーの質を保つ」と助言している。
木村さんは高校、大学、社会人野球で投手だった。社会人時代に右ひじを手術した直後、トレーナーの指導を受けながらトレーニングを進めた。痛みが徐々に和らいでいった。この経験から「自分も苦しんでいる人を助けたい」とトレーナーへの転身を決めた。
ソチ五輪(2014年)の前年の半年間、町田さんを指導。不調の原因は、ひざの筋肉に頼ってジャンプし、体力を消耗しているためだと突き止めた。股関節を使って跳ぶように指導すると、ばてずに演技できるようになり、ソチで5位入賞を果たした。
「何とか面倒をみてほしい」。市川靖久監督(35)は16年3月、知り合いだった木村さんに、ひじを手術して投げられなくなっていた投手のケアを頼んだ。乙訓のトレーナーになると、選手一人ひとりのデータを集め始めた。
ストライクの初球を振りにいく確率が50%を切っているとわかると、「初球は甘い球がきてヒットになる確率が高い」と助言。積極的に振るようになり、今では70%近い。投手の回ごとの球数を調べると、16球ほどでスタミナの消耗が激しかった。フォームを直して制球力を高め、回ごとの球数を3球ほど減らした。
データに裏づけられた練習が実を結び、昨秋の近畿大会で4強入りした。
二塁手の茨木祐哉君(17)は16年10月、右ひじを手術した。右腕が使えない間、木村さんは下半身を鍛える特別メニューを考えてくれた。茨木君は「体力が維持でき、復帰後に練習についていけた」と話す。
木村さんは「自分で考えながら野球をできるようになり、勝つ方法がわかってきた。とにかく甲子園を楽しみ、その経験を夏につなげてほしい」と話す。
乙訓は28日の第2試合で、おかやま山陽(岡山県)と対戦する。(川村貴大)