衆院厚生労働委員会は13日、野村不動産への特別指導に関する集中審議をした。加藤勝信厚労相は、同社社員の過労死が労災認定されていたことを3月5日に初めて報告を受けたと改めて説明した。特別指導は過去2例目で公表は初めてという異例の対応だったが、そのきっかけになった過労死の労災認定を事務方から知らされずに国会答弁していたことになる。
野党は、加藤氏が国会で都合の悪い過労死を伏せた上で裁量労働制の乱用を取り締まった例としてこの特別指導に触れたのではとみている。さらに、労災認定の報告を受けていれば答弁内容が変わっていた可能性もあるとして、「厚労省が国民をだましていた」と批判を強めている。今後も集中審議を求めていく構えだ。
政府は4月6日に国会に提出した働き方改革関連法案に、裁量労働制の対象拡大を盛り込む予定だった。加藤氏は2月の国会答弁で、野党側から過労死を招くとの批判を受けてこの特別指導に言及した。
同社社員が昨年12月26日に労災認定された事実は、3月4日に報道で明らかになった。加藤氏はこの事実を今月10日に認めたが、事務方からの報告時期については13日の衆院厚労委で「(3月5日まで)話が来ていない」と述べた。
また、答弁時点で過労死の労災申請自体は知っていたか改めて追及されたが明かさなかった。加藤氏は、遺族が公表に同意した範囲に労災認定は入っている一方、申請は入っていないと説明した。だが、労災認定の前に遺族が労災申請するのは自明だ。野党議員は「労災申請がいつかではなく、労災申請を(加藤氏が)いつ知ったのかは言える範囲だ」と指摘した。
今国会では安倍晋三首相が、裁量労働制で働く人の労働時間について「一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁したが、後に撤回。厚労省の事務方は、データが不適切だったことを答弁前に安倍首相に報告していなかった。