会見で話すハリルホジッチ前監督=2018年4月27日午後4時9分、東京都千代田区の日本記者クラブ、関田航撮影
サッカー日本代表前監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が、27日午後4時から東京都内の日本記者クラブで記者会見を行った。
スーツ姿で資料を持参して現れたハリルホジッチ氏は冒頭のあいさつで、「物見遊山で来たのではなく、日本サッカーに何かをもたらせるのではないかという気持ちだった。こんな形で日本を去るとは考えたことはない。最悪の悪夢でもこんなことを考えたことはない」と述べ、無念さをにじませた。
解任については、「私は日本でしっかり仕事をしてきた。(解任を)通告されたことに失望した。私へのリスペクトがなかった」と語った。
在任中の3年間を振り返り、「合宿、遠征のセッティングはほぼ完璧だった。公式戦、親善試合の準備も、私の人生でここまで規律正しくやってくれたのは見たことない。感謝したい」と支えてくれたスタッフに感謝した。また、取りざたされた選手との信頼関係については「選手の集中度、質の高さは本当に素晴らしい。誰とも何の問題なく、特に選手との問題は無い。コンスタントに連絡を取っていた」と語った。
W杯出場を決めた後の親善試合で振るわなかったことについて、「中盤とFWの解決策を探していた。W杯でパフォーマンスを出せる選手を探していた。結果のことは頭になかった。結果は満足行くものではないが、そこからたくさんの教訓を引き出せた」とした。
解任に至るまでの間に「なぜ『ハリル、問題あるぞ』と会長も西野さんも言ってくれなかったのだろう。一度も言ってくれたことがなかった」とし、日本サッカー協会と監督とのコミュニケーション不足をうかがわせた。解任を田嶋幸三会長から通告された際は「ジョークだと思った」という。田嶋会長に理由を聞くと、「『コミュニケーション不足』と言われ、『どの選手か』と聞くと、『全般』と言われた」と明かした。ショックの余り、5分で立ち去ったことを明らかにした。
ハリルホジッチ氏はDF槙野智章(浦和)ら多くの選手やスタッフからメッセージをもらったことを明かし、「選手とのコミュニケーションに問題が無かった」と主張した。
解任については、「会長には解雇権があるので、解雇は問題ない。ただ、問題があるなら前もって教えて欲しかった。何の相談もなかった」と話した。「『ウクライナに負けたんでしょ』とかリザルトをぶつけてくれたら理解できる」とも語った。「『技術委員会が選手と監督の関係の修復を試みた』と会長は言うが、私はあいさつをしたかもしれないが、技術委員会の存在すら知らなかった」とした。
会見の最後のあいさつで「日本代表はいいW杯、いい試合をしてほしい」と日本代表にエールを送り、会見を締めくくった。
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ハリルホジッチ氏はワールドカップ(W杯)ロシア大会を約2カ月後に控えた今月7日に解任された。ハリルホジッチ氏は21日に、荷物整理などのために来日していた。その際、報道陣に「私はゴミ箱に捨てられた。まだ終わっていない。誇りを傷つけるようなところとは闘わないといけない」と話していた。
ハリルホジッチ氏は2015年3月、八百長疑惑で解任されたアギーレ氏の後任として日本代表監督に就任。17年8月には、日本を6大会連続6回目のW杯出場に導いていた。
ハリルホジッチ前監督をめぐる経緯
2015年
3月13日 八百長疑惑で解任されたアギーレ氏の後任として、日本代表監督に就任。記者会見で「私のすべてはサッカーに捧げている」
2016年
9月1日 ワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア最終予選、ホームでアラブ首長国連邦(UAE)に逆転負けを喫する
2017年
8月31日 W杯アジア最終予選、ホームでの豪州戦で戦術、采配が当たって快勝。ロシア大会出場を決める
12月16日 E―1東アジア選手権の韓国戦で1―4の歴史的大敗。日本協会がいったん解任を検討するも、続投の判断
2018年
3月27日 ベルギー遠征でウクライナに完敗。この遠征中、西野朗・前技術員長がチーム状況に関して選手に聞き取りを行う
ハリルホジッチ氏は海外組の視察などのためそのまま欧州に残る
4月7日 極秘渡欧した田嶋幸三・日本協会長がパリで解任を言い渡す
9日 日本協会が解任を発表。後任は前技術委員長の西野氏
13日 ハリルホジッチ氏が記者会見を開く意向を関係者を通じて明かす
21日 ハリルホジッチ氏が再来日。報道陣に「私はゴミ箱に捨てられた」と話す。日本記者クラブが27日に記者会見を開くと発表