表彰式を終え、記念撮影する内村航平(右端)、谷川翔(左端)、村上茉愛(中央手前)ら=北村玲奈撮影
体操の全日本個人総合選手権の最終日は29日、今秋の世界選手権(ドーハ)と今夏のアジア大会(ジャカルタ)の2次選考会を兼ね、東京体育館で男女の決勝が行われ、男子は順大2年で19歳2カ月の谷川翔(かける)が史上最年少優勝を果たした。予選と決勝の合計で172・496点だった。21歳の白井健三(日体大)が2位。2008年から10連覇中だった29歳の内村航平(リンガーハット)は3位だった。
内村航平11連覇ならず 19歳谷川が初V 体操全日本
内村航平に来た「その日」 「醜い姿見せても代表に」
女子は、昨秋の世界選手権4位の村上茉愛(まい)(日体大)が全4種目で安定した演技を見せ、112・398点で3連覇を達成した。2位には寺本明日香(ミキハウス)が入った。
「まだ実感がわきません」。端正な顔に少しこわばった笑みを浮かべ、谷川はこの言葉を繰り返した。
「憧れの人」だった内村や白井が、「身近な目標」に変わったのは昨年秋だ。同じ大学で2学年上の兄航(わたる)が世界選手権の代表に入ったのがきっかけだった。
生まれ故郷の千葉県船橋市で、兄の背中を追うように小学1年で体操を始めた。大学に入り、ずっと目標にしていた兄と「競えるようになった」と感じていた矢先の兄の代表入り。自信が芽ばえた。
2日前の予選で2位に入り、決勝は日本の第一人者たちと同じ組で回った。
難しい技でDスコア(難度点)を取りにくる白井、淡々と貫禄の演技を続ける内村、そして尊敬する兄を横目に、谷川は持ち味を発揮した。つま先まで伸びた美しさ、そして静止すべきところは静止する丁寧な体操で、高いEスコア(出来栄え点)を連発した。
19歳2カ月での全日本制覇は、同じく19歳で制した塚原直也さんや内村らを数カ月の差で抜く、史上最年少での栄冠だ。
「実感がわかない」。また言った後、きっぱりと続けた。「日本一になったからには自覚を持って。世界一を目指して頑張っていきたい」(平井隆介)