公判があった名古屋地裁豊橋支部=愛知県豊橋市
世界トップのシェアを誇るドリルメーカーの元社員の男は、不正にコピーした勤務先の情報を中国企業に渡していた。会社の人事異動に不満を抱いたことをきっかけに、違法行為を起こした技術者の心境が、法廷で明らかになった。
3月15日、名古屋地裁豊橋支部であった初公判。黒スーツ姿の被告の男(62)は、弁護人席前のソファにうつむいて座った。
被告が勤務をしていたのは、愛知県豊川市に本社を置く切削工具メーカー「OSG」。ドリルで開けた穴の内側にねじ用の溝を作る「タップ」分野で世界トップのシェアを持つ。被告は、会社からタップの工作図データなど141点を、不正な利益を得る目的で私用の外付けハードディスク(HDD)に保存したとして、昨年10月に不正競争防止法違反の疑いで愛知県警に逮捕され、翌月に起訴された。
初公判で裁判官に認否を問われた被告は、「間違いありません」と起訴内容を認めた。
冒頭陳述や被告人質問などから経緯をたどる。
被告はOSGがある豊川市の出身。大学で機械工学を学び、別の会社を経て26歳でOSGに入社し、ブラジル赴任も経験した。1998年から2013年まで、神奈川県にある子会社に出向した。
変化が訪れたのは、13年7月ごろ。突然、本社への帰任を命じられた。当時の研究や開発を続けたかった被告は、反発したという。
出向先では、技術部長としての…