日本標準時(JST)を作る施設と活用法
時報などに使われている「日本標準時」(JST)が、災害時にも途絶しないよう、情報通信研究機構(NICT)は東京都内の設備に加えて、原子時計などを備えた副局を神戸市内に設ける。「時の記念日」の6月10日から運用を始める。
JSTは東京都小金井市にあるNICT本部の高精度なセシウム原子時計18台と水素メーザー原子時計3台を使って、決められる。時報や交通機関の運用、電子商取引の証明などに活用され、時刻を提供するサーバーへのアクセスは1日約12億回、アナログ電話回線でも月に約14万件の利用がある。
副局を設置するきっかけは、2011年3月の東日本大震災だ。原発事故に伴う避難指示で、福島県にあったJSTの電波施設を停止せざるを得なくなった。電波時計はこの施設と九州にある施設の2カ所が発信する電波を使って時刻を微修正するが、停止の影響で一部の電波時計が正確な時を刻めなくなり、利用者から500件以上の苦情が殺到した。本部で大きな被害が出れば標準時を決めたり、発信したりできなくなる恐れがある。井戸哲也・時空標準研究室長は「標準時の信号は、送れなければ生成する意味が無い。国民生活に影響がないような最低限の備えは必要」と話す。
神戸市の副局は、日本の標準時子午線(東経135度)から4キロ西にあるNICT未来ICT研究所に置く。5台のセシウム原子時計と2台の水素メーザー原子時計で運営。通常は現地と東京からの遠隔で監視し、大地震などで本部から送信できなくなった際は、7台の時計を駆使して標準時を作成、提供する予定だ。災害時には責任者が現地に駆けつける。
NICTの花土ゆう子・上席研究員は「これで非常時も標準時が途切れなくなる。(本部と副局を)衛星でリンクさせて一つの時計として標準時を作る研究にも取り組みたい」と話している。(小坪遊)