富士フイルムホールディングスの株主総会の会場に入る株主=28日午前、東京都港区、伊藤進之介撮影
米国の事務機器大手ゼロックスの買収計画が暗礁に乗り上げている富士フイルムホールディングス。28日に東京都内で開いた株主総会は非公開だったが、関係者への取材で質疑応答の内容が判明した。
助野健児社長(63)は、現金支出なしで買収する手法を米ゼロックス大株主から批判されたことを念頭に「成熟事業に大きな現金投入をしたくない」と話した。買収計画を主導した古森重隆会長(78)は発言しなかった。株主の主な質問と助野社長の回答は次の通り。
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――(買収計画について)この選択肢が最良という説明だったが、だれにも最良ということなら、今の状態にはならないのでは。
「事務機器分野は成熟事業。これから経営資源を投入せずに収益を創出できる体制を構築する。むしろ資源は、成長を加速していく事業に投入したい。従って(買収計画に)大きな現金投入をしたくない、という背景がある。われわれのベストシナリオだと考えている」
「米ゼロックス株の15%分しか持っていない大株主が反対して起こした訴訟で、買収手続きが差し止められている。誠に納得がいかない。85%の株主の意見が反映されていない。上級審で、合意していた買収計画がベストだと主張していきたい」
――今後のメーンシナリオは。
「まず上級審で、我々の考えをしっかりと説明する。米ゼロックスの85%の株主がどう考えているのかも、しっかり聞いていきたい。この計画ができないことで大きなダメージをうけるのは、米ゼロックスのほうではないか」
――(米ゼロックスが買収合意を破棄した理由に挙げた)子会社の富士ゼロックスの不正経理問題に火がつくなどしたのは、経営陣に厳しさが足りないからでは。70歳以上の役員もいて、問題に対峙(たいじ)する姿勢が足りないのでは。
「株主の意見を受け止めて経営にあたっていく」
――70歳を超えた取締役候補者がいる理由は。
「候補者の選定は、年齢に関係なく、過去の実績、人格などで、経営にあたるのにふさわしいかを第一に考えている。いまは企業環境が激変しているので、豊富な経験にもとづく方が、ますます重要になる。そういった観点なので、年齢で判断することはない」