西日本豪雨で大きな被害が出た広島県で、自転車の人気が高まっている。通勤に使われていた多くの車やバイクが土石流で流された。在来線の不通は解消されず、道路の渋滞が続くなか、手軽で確実な移動手段として「復権」している。
【特集】西日本豪雨
広島県海田町(かいたちょう)のJR海田市(かいたいち)駅前。ロータリーから100メートル以上離れた橋の上まで歩道に自転車がずらりと並ぶ。町の担当者によると、災害後、駐輪場の利用者が増え続け、近くの歩道を臨時駐輪場として広げてきた。日中の利用は災害前より1千台ほど多い、約1700台に上るという。
JR山陽線の広島駅―海田市駅間は運行しているものの、海田市駅から先の山陽線と呉線は不通のままだ。会社員男性(56)は坂町(さかちょう)の自宅から海田市駅まで約5キロを自転車で移動し、JRで広島市内の勤務先へ向かう。以前はバイクで15分ほどかけて通勤していたが、豪雨でバイクが水没。「自転車での移動は暑くて大変。でも、バイクを買い直すと費用もかかるので」
近くの自転車店「キムラじてんしゃ」では災害後、自転車を求める客が相次ぎ200台以上が売れた。木村元和社長は「渋滞が嫌で『それなら自転車に』と考える人も多い。移動手段の一つとして見直されているのでは」と話している。(西川迅)