浸水した地域では乾燥した土砂が粉じんと化して大量に舞う中で、被災者やボランティアが家屋の片付けを続ける地域がある。粉じんを大量に吸い込むことなどへの不安の声が被災者から上がる。健康面にどんなリスクがあるのか。
被災地のために今できること…西日本豪雨支援通信
西日本豪雨、列島各地の被害状況は
愛媛県宇和島市の被災地域では今月中旬、舞い上がった土ぼこりが家々の窓や樹木に降り積もっていた。がれきを運搬するトラックや車が通るたびに土ぼこりが舞い、黄色い幕のように辺りに立ち込めた。
厚生労働省の担当者は「のどや目の粘膜に付着して炎症を起こし、結膜炎や気管支炎にかかる恐れがある。もともとぜんそくなどの疾患を抱えていると重症化の恐れもある」と話す。岡山県倉敷市の避難所では、粉じんが目に入ったことが原因とみられる結膜炎の訴えも相次いだ。
国立感染症研究所の大石和徳・感染症疫学センター長は土壌に潜むレジオネラ菌が粉じんに付着している可能性を指摘する。吸い込むと肺炎発症の恐れがある。実際、東日本大震災でがれき処理に従事し、レジオネラ菌への感染から肺炎を発症したケースもあったという。
また、建材にアスベストが含まれている恐れもある。粒子は極めて小さく、吸い込むと肺の組織内に長くとどまり、肺がんや中皮腫を引き起こす恐れがある。家屋の解体現場などは特に注意が必要で、厚労省はがれき処理の際は水をかけて湿らすことで飛散を防ぐよう呼びかける。
また、こうした様々な健康面へのリスクを防ぐために、厚労省は目元をゴーグル、口と鼻を気密性の高い防じんマスクでしっかり覆うことを指導する。防じんマスクは細かい粒子を通さない構造になっている。だが、「炎天下の作業で、防じんマスクは汗を拭いにくいため、一般のマスクで代用している人も多い」(倉敷市の担当者)という。
大石センター長は「一般的なマスクでもある程度の粉じんを防げるが、がれき処理などの現場では防じんマスクが必須だ。すき間がないように正しく装着してほしい」と呼びかける。(机美鈴、山田佳奈)