(9日、高校野球 創志学園7―0創成館)
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鋭い金属音を残して打球が三遊間を破ると、創志学園(岡山)の2番宮崎竜成(りゅうせい)君(3年)は走りながら右手の拳を握った。高めの直球をとらえて、3点目。
9日第3試合、創志学園は、春夏連続出場の創成館(長崎)を攻略。四回2死から5連打で均衡を破り、得点を重ねた。
母の宮崎(旧姓・児玉)千佳さん(48)は女子ソフトボールの元日本代表選手。勝負強い打撃を買われ、1996年のアトランタ五輪に三塁手として26歳で出場した。その母が野球を教えてくれた。
「高めの球にはバットの先を立てるイメージで」「守備は1歩目が大事」――。小中学生の時は毎日200球の打撃練習や守備練習に付き合ってくれ、助言をもらった。父の重雄さん(48)も元球児で、87年に丸亀商(現丸亀城西、香川)の選手として春の甲子園に出場経験がある。ただ仕事が多忙で、野球の指導役は母だった。
自宅のある徳島を離れ、創志学園で寮生活が始まると、母は電話や手紙をくれて気にかけた。厳しいライバル競争の経験から、「レベルの高い選手が集まる強豪校では、自分の力にさらに磨きをかけないと試合に出られない」と発破をかけた。試合を見た時には、「打席で弱気なところが見えるから、次は強気に行け」「あの打球取れたんちゃうか」と熱が入る。
母はメダルを期待された五輪で4位。「強化種目でメダルを取れずショックだった。あの子には一つでも多く勝って悔いを残さないでほしい」と願う。
宮崎君は母直伝の軽やかな球さばきと正確な送球を見せ、打撃では母と同じく高めのボールをたたくのが得意になった。母の高校時代の恩師でもある長沢宏行監督(65)は宮崎君について、「母譲りで打球の処理が上手で負けず劣らずのパワーヒッター」と評する。
この日、エース西純矢君(2年)の16奪三振の好投もあり、7―0で攻め勝った。宮崎君は1安打2四球で3度出塁。「甲子園で1勝できたので父は越えられたけど、母さんの勝負強さにはまだ勝てない。背中を追いかけています」(沢田紫門)