北海道の空の玄関口、新千歳空港は8日朝、国際便の発着が再開されるなど、出発ロビーは多くの人でごった返した。札幌市内のデパートも営業を一部再開。市場の競りも始まった。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
新千歳空港の国際線出発ロビーのチェックインカウンターには、出国を待ちわびた外国人観光客が、長い列をつくった。
タイ・バンコク行きの便を待っていたカスィダナット・タウィトンボリブーンさん(28)は「生まれて初めての地震。怖くて何をどうしたらいいのか全くわからなかった」と振り返った。「最初は怖かったが、今はだいぶ安心している。また日本に戻ってきたい」と笑顔で機内に向かった。
カナダから家族旅行に訪れていたルディック・ギョンさん(32)はホテルのおもてなしが忘れられない。停電で真っ暗な中、ロウソクを用意してくれ、アイスクリームが配られた。「あたたかい対応のおかげで、安心できた」と話す。情報不足には困らされたが、「身の危険を感じることはなかった。道路には警官が立っていたし、地元の人も声をかけてくれた。ホテルの対応もよくて、怖いことはなかった」と語った。
国内線ロビーも多くの人で混雑した。佐賀県から3泊4日の予定で旅行に来ていた福島晴人さん(66)は北海道小樽市のホテルで地震に遭った。タクシーや鉄道を乗り継いで7日夜に空港にたどり着き、ロビーで毛布を借りて、一夜を過ごした。「ふだん当たり前だと思っていたライフラインがストップすると、こんな不便になることを痛感した」と話していた。
母親の引っ越し準備のため、東京から札幌市の実家に来ていた会社員岩崎勇樹さん(37)も空港のロビーで一夜を明かした。
一人暮らしの母親からは常々、「北海道は災害もなくていいところだから帰っておいで」と言われていたという。「こんな経験をするとは」
コンビニで100メートル以上も並んでレジを待ったり、携帯電話の充電を待ったりしている時に、知らない人同士で「大変ですね」「どこから来たんですか」と声をかけあったという。「大変なときにいたわり合っていい経験になりました」
「マグロ始めるよ。さぁ、いくら!」。威勢のいいかけ声に、数人の仲卸業者の手が挙がった。
札幌市中央区の中央卸売市場では8日朝、水産物の競りが再開された。だが、魚介類のほとんどは地震直前の6日未明に入荷したもの。停電で冷凍庫が使えなかったり水槽の水温を調節できなかったりしたなかで、保存されていた魚だ。
「新鮮さ」に欠けるマグロを見ながら、高橋水産(札幌市中央区)の佐藤孝裕さん(53)は言った。「どの魚も値が下がっている。いつもの半値くらいで取引されたものもあった。2日も競りができなかったのはかなり痛い」
通常なら、落札された魚はその日のうちに札幌市内のすし屋やスーパーなどに並ぶ。だが、競り人で丸水札幌中央水産(札幌市中央区)の坂田侑紀さん(36)は「営業している店が少ないのもあるが、ガソリン不足など運送の問題で届けることもできない場合がある」と頭を悩ませる。
札幌市内の一部の百貨店や商業施設は8日から営業を再開した。
大丸札幌店は午前10時の開店前から、150人以上が列をつくった。地下の食品売り場には大勢の買い物客が詰めかけた。
札幌市手稲区の美容師の女性(55)は「家は大きな被害がなかったが、冷蔵庫にあった食料で食べつないだ。いつもの生活が戻って来て、感謝しかないです」。大阪府吹田市から観光で来た60代の女性は「6日に帰る予定が、飛行機が欠航し、停電したホテルに泊まった。おみやげが買えそうでひと安心」と話した。