被災者の生存率が著しく下がると言われる72時間が迫るなか、北海道地震で大規模な土砂崩れに襲われた厚真(あつま)町では、行方不明者の捜索が夜を徹して続いた。地震発生から3日目。新たに心肺停止状態の住民らがつぎつぎに見つかった。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
「前進!」。8日午前10時ごろ、土砂崩れが発生した吉野地区では、警察官や自衛隊員ら数十人が、土砂の中から助け出した行方不明者と見られる人をブルーシートで覆って運び出した。その後、救急車に乗せられて現場を離れた。
田んぼに大量の土砂や木々が流れ込み、家々を押しつぶした別の現場では、自衛隊のショベルカーが、水を含んだ土砂をかき分けていた。家屋の断熱材や布団、畳、かばんが混じった土砂がすくいあげられるたび、スコップを手に周囲で見守っていた自衛官や消防隊員、警察官らが身を乗り出して目を凝らす。ショベルカーが動きを止めると災害救助犬も付近に入り、せわしなく動いていた。
捜索にあたる自衛官の一人は「行方不明者が残っている場所に重機などを集中的に投入し、救助にあたっていきたい」と語った。
道警によると、7日深夜から8日未明にかけて、行方不明者が相次いで土砂崩れ現場から見つかった。
当初、厚真町の災害対策本部は「夜に雨が強くなる可能性がある。現場は滑り、危険なので、捜索は一時中断する」と発表し、警察と消防は7日午後11時で捜索を中断した。
しかし、近隣の千歳市に司令部がある陸上自衛隊第7師団は「安全に配慮しながらも捜索活動は続ける」とし、独自の判断で作業を続けた。隊員の中には本人や家族が厚真町の周辺出身者という人が少なくない。
隊員800人を指揮する陸自の川口貴浩・第7特科連隊長は「二次災害の防止に着意しながら、指揮官、安全係を立て、自衛隊の判断で捜索を継続した」と話し、「72時間を超えても、行方不明の方がいる限り、全員発見、救出に全力を挙げていく」と述べた。
犠牲者の遺体が安置されている厚真町役場近くの児童会館には、救急車や警察車両が頻繁に出入りし、8日も早朝から家族や親族が確認や対面に訪れた。
厚真町幌里の赤坂愛子さん(72)は、近くに住む兄(87)を亡くし、知らせを受けて駆けつけた。兄は6人きょうだいの長男。足を悪くしていたが、かつては一生懸命、農業の仕事をしていたという。「優しい、いい人。突然、こんなことになり、悔しいだけです」