ブルガリア北部ルセで地元テレビ局に勤務する女性(30)が性的暴行を受けて殺害された事件で、同国政府は10日、容疑者が9日にドイツで逮捕されたと発表した。女性が司会を務めた番組で欧州連合(EU)の開発資金に絡む不正疑惑を取り上げたため、報道との関連を問う声が上がったが、ブルガリア政府は無関係だとの見方を示した。
現地メディアによると、6日、ルセのルーマニアとの国境に近いドナウ川沿いの公園で、被害女性の遺体が見つかった。所持品の一部も奪われていた。
10日に記者会見したブルガリアのボリソフ首相らによると、容疑者は21歳のブルガリア国籍の男で、泥酔した状態で犯行に及んだとみられ、犯行後、母親の住むドイツに渡ったという。捜査当局はDNA鑑定の結果などから、十分な疑いがあると判断した。
女性が司会を務める番組は9月30日、EU資金に絡む不正疑惑を追う2人のジャーナリストを取り上げていた。欧州では昨年10月にマルタで、今年2月にスロバキアで、それぞれ政府に都合の悪い調査報道をした記者が殺害されており、国際機関などから今回の事件と報道の関連を問う声が上がっていた。
ボリソフ首相は10日の記者会見で、事件と報道を結びつけようとする見方への不満を示し、ブルガリアの報道の自由を強調した。(ウィーン=吉武祐)