欧州連合(EU)は2日、加盟28カ国による臨時首脳会議で、秋に交代する新たな欧州委員長候補としてドイツ国防相のウルズラ・フォンデアライエン氏(60)を選ぶことで合意した。欧州中央銀行(ECB)総裁の後任の候補には国際通貨基金(IMF)トップのフランス人、クリスティーヌ・ラガルド専務理事(63)を選んだ。
欧州委員長、ECB総裁とも、2人が就任すれば初の女性トップとなる。
また、EU首脳会議常任議長(大統領に相当)の後任はベルギーのシャルル・ミシェル首相(43)、外交安全保障上級代表(外相に相当)の後任候補には、かつて欧州議会議長を務めたスペインのジョセップ・ボレル外相(72)が選ばれた。
フォンデアライエン氏は2005年からメルケル政権下で閣僚を務め、13年、同国初の女性国防相に。メルケル氏の後継と評されたこともある。欧州議会での承認が得られれば、11月1日に欧州委員長に就任する。欧州委員会はEUで適用される法律の提案権を握る行政機関で、そのトップである委員長はEUを代表する顔だ。
ラガルド氏はフランス財務相などを経て、11年7月にIMFの初の女性トップとして専務理事に就任。ギリシャ発の金融危機に、EUとともに対処した。マクロン仏大統領が、同氏のECB総裁就任を強く望んだとされている。
ミシェル氏は14年10月にベルギー首相に就任。18年12月、移民保護に関する国際協定への賛意を示したことをきっかけに連立政権の枠組みが崩れて辞意を表明し、今は暫定首相の座にある。ラガルド氏、ミシェル氏の人事はいずれも欧州議会の承認は必要ない。
残る主要ポストの欧州議会議長には、出身地域のバランスを取る観点から、東欧の加盟国から選ぶことを検討しているもようだ。
4人の人事は、6月20~21日の首脳会議でまとまらず、30日から3日連続の臨時EU首脳会議を経て2日夜、ようやく決着した。
最も難航した欧州委員長のポストを巡っては候補が二転三転。EUを引っ張ってきた独仏が当初、推した候補には決まらず、両国の影響力の低下が示された格好だ。(ブリュッセル=津阪直樹、ベルリン=野島淳)