来年9月のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会出場に向け、「追加招集の男」が三度目の正直をめざす。神戸製鋼の山中亮平(30)。2011年にひげ育毛剤を使ってドーピング違反となり、2年間の資格停止処分を受けるなど、11年、15年のW杯は落選した。3日、W杯2連覇中の王国、ニュージーランド(NZ、愛称オールブラックス)戦にFBで先発する。
ラグビーワールドカップ2019
追加招集といえば山中だ。日本代表やスーパーラグビーのサンウルブズで負傷者が出るたびに、急に呼ばれた。本人によると、その数は10回以上という。
今回も10月1日に発表された代表メンバーからは漏れていた。それが、FB松島、野口の負傷で呼ばれた。「今年の目標は秋にジャパンに入るという目標でやってきた。どんな形であれ、かなっている」
チーム事情で今季はポジションも変わった。神戸製鋼は今季、ニュージーランドから世界的SOダン・カーターを獲得。SOだった山中はFBに転向した。これが吉と出て、FBとしてのプレーがジョセフヘッドコーチの目にとまった。「FBの動き、ポジショニングは不安はない」と山中は言う。
山中は過去2度、W杯メンバーに届きそうで届かなかった。11年は代表候補になりながら、ドーピング違反で2年間の資格停止処分を受けた。この間、神戸製鋼のラグビー部を退部し、一般社員として働いた。神鋼のレジェンド、故・平尾誠二さんの「やってしまったことはしょうがない。頑張って復帰しよう」との言葉に救われた。
15年は最終選考となった8月の宮崎合宿で落選した。「外れた時は悔しかったですけど、みんながW杯で活躍するのを応援していた。やってきたことは間違いじゃなかったと思ってすごくうれしかった」
東海大仰星高で全国優勝し、早大時代の10年、日本代表初キャップを得た。浮き沈みが激しい選手生活で、19年W杯は最後のチャンスと覚悟する。「思い切ったプレーをしたい。アグレッシブに、ミスを恐れず、ちっちゃくならず」。オールブラックス相手に活躍できれば、これ以上ないアピールとなる。「来年に向けてはこの秋が大事。ラストチャンスだと思うのでしっかりアピールしたい」
対戦相手のNZは15年W杯で史上初の2連覇、10月27日には横浜で豪州を破り、目下世界最強だが、日本戦は代表出場経験の少ない若手中心の構成だ。
NZは主力を11月のイングランド、アイルランド戦に温存。日本戦の先発15人のうち、代表10試合未満の経験の浅い選手が10人名を連ねた。リザーブを含めると8人が代表出場経験0。ハンセン監督は「新しいキャップ(代表戦出場)を与えすぎだという議論はナンセンス」と語る。(能田英二)