第43期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)で井山裕太名人(29)を4勝3敗で破って、10期ぶり通算5期目の名人を獲得した張栩新名人(38)が3日朝、最終第7局の対局場となった静岡県河津町の「今井荘」で、激闘から一夜明けての心境を語った。 復活の張栩「書かないでね」笑顔の裏に、覚悟の捲土重来 無冠・猫の死…失意の中、故郷で心磨いた張栩氏再び輝く 妻の泉美さんには対局直後に電話で連絡した。「2カ月間お疲れ様でした」という内容のメールももらったという。昨夜は午前2時ごろに寝て、今朝はすっきり目覚めた。 「この1年間、名人戦のことを意識して戦ってきて、ずっと目標にしてきたことが現実になった。でもこれからが大変。責任ある立場だし、日本の囲碁界全体を盛り上げられるようにさらに精進しなければいけない。長い間、井山さんひとりにすべての責任を任せていたところもある。その重さも一応分かるつもりなので、少しは一緒に背負いたいなと思います」と語った。 七番勝負は出だしで2連敗。1勝を返したものの第4局に敗れてあとがなくなった。ただそれほど悲観していなかったという。「先行されて精神的にはそれなりに苦しい部分もあったんですが、負けている時ほどみんなたくさん応援してくれる。その応援に応えたいという気持ちも強くなるし、悪いことばかりではないと思っていました」と振り返る。 「1局目はわりと完敗に近く、2局目は自分なりに結構手応えを感じていたが、はっきりとした勝機が一瞬だけあったのを逃した。3局目で混戦を勝てたのが大きかった。5年近く勝てなかったので、とにかく最悪の状況を避けられた。2局目も接戦だったし、3局目で勝ってみて、(井山さんに)勝てない碁じゃないと改めて強く思いました」と言う。 その後、趣味のボルダリング中に足をけがしてしまった。「対局の疲れがあったのか、体の動きがちょっと悪くて……。なるべく必死に体調を整えたつもりだったんですが、4局目の内容がシリーズ最悪。序盤ではっきり優勢を築くチャンスがあったのに、1局を通じて悪い手をいっぱい打ってしまった。あのようなまずい碁は二度と打たないようにと思いました」 第5局、第6局と勝って迎えた最終第7局は「中盤にかけて自分としてはちょっと珍しい模様を構える打ち方をして、いろいろと自分の打ちたいように打てた。形勢は終始難しかった。最後に勝負がつく局面では、相手に正しく打たれてたら負けだったらしいが、打っているときはよく分からず、いい勝負と思っていた。秒を読まれて井山さんが簡単なミスをしてしまって、運がよかったなと思います」と話した。 今後の目標は「これから世界戦に代表として出ることも増えるし、恥ずかしくない碁を世界で見せたい」。いま一番やりたいことについては「ちょっとずつ足が回復してきたので、早くまたボルダリングがやりたいな」と言って笑顔を見せた。(村上耕司) … |
張栩新名人「囲碁界の責任、井山さんと一緒に背負う」
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